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パンデミックで歯科受診できない子どもが増える?

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

パンデミックで歯科受診できない子どもが増える?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延が社会に与えている影響は計り知れません。デンタル・ケアも例外ではなさそうです。

つい最近、米国歯科医師会誌に、コロナ禍で経済的損失のあった家庭における医科および歯科の受診状況を調べた興味深い論文が発表されました。今回は、これを中心に書いていこうと思います。

研究の背景

この研究論文(JADA2021: 152(5): 369-376)は「What is the association between income loss during the COVID-19 pandemic and children’s dental care?」と題し、ピッツバーグ大学歯学部とジャクリーヌ・ブルゲーテ氏などのリサーチによりまとめられたものです。パンデミックに付随した失業および収入減という環境にある中で、どのくらい歯科診療に行きたい子どもに(受診の必要があるにもかかわらず)応じることができなくなったかについては、これまでよくわかっていませんでした。

こうした事情を背景に、ピッツバーグ市内の348家庭で2020年の6月25日から7月2日の期間、保護者の自己申告に基づき調査が行われました。すると、40%の家庭が失業または収入減などパンデミックの影響があったと回答しました。

医科より歯科がパンデミックの影響大

論文では、経済的損失のあった家庭は子どもの医科診療および(新型コロナウイルス以外の)ワクチン接種が5%低いと報告されています。さらに、子どもの歯科診療では16%も低くなりました。この結果から、失業あるいは収入減という経済的損失と子どもの歯科未受診には、高い相関が認められます(危険率P=0.022)。

パンデミックに付随した失業および収入減という環境下において、子どもが歯科診療を受けたい場合でも要求に応じることができなくなったケースは、医科診療の場合より3倍も高く、かなり日常的な現象になっていることがわかります。パンデミックによる子どもの歯科治療へのアクセス低下が続くのであれば、従来の診療方針とは異なっても、革新的な方法が求められます。たとえば、遠隔歯科治療(Teledentistry)、あるいはプライマリー・ケアの段階における予防処置などを用いて、歯科治療へのアクセスを向上させる必要があるでしょう。

まとめ

コロナ禍で、子どもが歯科治療を受けたくても、経済的に受けさせてあげられない家庭が増えているようです。医科よりも影響を受けている可能性が高く、また、大人でも同様のことが考えられるため、新たな社会問題と言えるでしょう。経済的理由あるいは感染を恐れての来院の減少が健康の悪化につながらないように、業界はもちろん行政や民間も連携し、さまざまな策を講じて対処していかなればなりません。

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748