健康な歯でスマイルライフ
日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。
キシリトールで下痢?
先日、日本語の無料Q&Aサイトで歯科のトピックを見ていたところ、「キシリトール入りのガムをひと粒食べたら下痢をしました。そういうことってあり得ますか?」という質問を見かけました。小生、キシリトールでは下痢の経験がないものの、他の甘味料入りチョコレートを少し食べただけで下痢をするので、興味深く拝読。そして今回、この話題を取り上げることにしました。
安全で虫歯予防に効果的とうたわれるキシリトールは、いろいろなサプリメントにも添加され、広く使われている甘味料です。下痢の問題を含めて、改めて解説していきたいと思います。
キシリトールとは?
キシリトールは自然界に広く存在する糖アルコールの一種です。昔からフィンランドなどの北欧でシラカバやカシの木から取れる天然甘味料として知られていました。そのフィンランドで虫歯が少ないことがわかり、原因を探っていくうちにキシリトール摂取に行き着き、歯科でがぜん注目されるようになったのです。現在では、歯磨き粉、ガム、キャンディー、洗口液などの製品開発に応用されています。
キシリトールは砂糖と同じくらいの甘さがありますが、カロリーは砂糖の約3/4です。歯科でのメリットとしては以下が挙げられます。
1.虫歯の原因にならない(キシリトールは、食 べても酸が発生しない)。
2.唾液の分泌と再石灰化を促進し、虫歯になり にくい口内環境を整えてくれる。
3.ミュータンス菌の増殖を防ぎ、健康な口内細 菌叢(さいきんそう)のバランス形成を促す。
キシリトールの効果的な食べ方
1日5グラム以上、回数を分けて朝昼晩と摂取するのが効果的です。キシリトール100%のガムなら、4粒程度です。2週間でプラークが減り始め、3カ月続けると虫歯のリスクが下がり、1〜2年続けると、その効果が持続すると言われています。
ただし、キシリトールを1度に大量(20〜30グラム以上)に食べると、お腹が緩くなってしまうことがあります。個人の体質によっては、ガムひと粒でも下痢をしてしまう場合があるかもしれません。これは、キシリトールやソルビトールのような糖アルコールは、小腸で消化、吸収がされにくいため、その吸収されなかった糖アルコールを一生懸命消化しようと腸管壁から水分が引き出され、大腸の中の水分が増加することで下痢をしやすくなるからだとされます。
なお、キシリトールは、犬などのペットには禁忌です。インスリン分泌を異常に促進させるため、低血糖を引き起こして死亡する例も報告されています。注意しましょう。
まとめ
虫歯になりやすい方はキシリトールを有効に使うといいかもしれません。しかし、一方で体質的に合わず、少量でも下痢をしてしまう可能性もあり、その点は注意が必要です。