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氷食症とその歯科的問題点〜健康な歯でスマイルライフ

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

氷食症とその歯科的問題点

暑くもないのに氷をバリバリ食べるのを止められない人は身近にいませんか? 氷を異常に食べる習慣が1カ月以上続く場合、氷食症と言われ、思わぬ病気が潜んでいる場合が少なくありません。今回は氷食症とその歯科的問題に焦点を当てていきたいと思います。

氷食症は異食症の一種

氷食症を始め、栄養が取れず通常食べることのないものを1つ以上、少なくとも1カ月間、継続して口にしてしまう摂食障害のことを、異食症と言います。 摂取の対象物としては、氷、土、毛髪、チョーク、ガラス、歯磨き剤などが挙げられます。特に氷、土、毛髪を食べることが知られており、氷食症、土食症、食毛症という個別の症状名もあります。

氷食症の原因

関連性の高い疾患とされるのが、鉄欠乏性貧血です。これは女性に多い疾患で、氷食症も20〜40代の女性に多く見られます。

どうして鉄欠乏性貧血が氷食症の原因になるのかはよくわかっていないのですが、貧血による口腔内の炎症を和らげようとするのでは、という説があります。確かに鉄欠乏性貧血では、舌が炎症で赤くツルッとした感じになる、平滑舌という症状を呈しやすくなります。

また、氷をかむことによって、反射的に脳の血流を上げようとしているという説を唱える人もいます。その他、ストレスなどによる精神疾患、ある種のがんが引き金になることもあり、氷食症の症状が出現したら、ただちにかかりつけ医や内科を受診するのがベターと言えます。貧血などの基礎疾患が改善されると、氷食症も回復することが少なくないようです。

貧血には氷?

ラットで貧血状態を作ると、より氷をかむようになるという有名な研究もあります(Science 169: 1334-1336, 1970)。ラットをあらかじめ、水と氷の両方で水分を摂取するように習慣付けておきます。半数のラットからは血を抜き、貧血状態を作ります。そうすると、血を抜いていない(貧血状態でない)普通のラットは約45%の水分を氷から摂取するのに対し、なんと貧血ラットは96%の水分を氷から摂取するという結果になりました。両群の水分摂取量に差はありませんでした。

驚くことに、この研究では、貧血のラットについては氷をなめるより、かじるほうが多く見られたとの報告もあります。また、この傾向はラットの貧血が改善するにつれ消失し、貧血がなくなったラットは氷には見向きもしなくなったとのこと。とても興味深い研究です。

氷食症の歯科的問題点

氷食症は歯科においても好ましいものとは言えません。氷をガリガリかむことによって、歯にヒビが入ったり、歯が欠けたり、壊れたりというリスクが出てきます。また、顎関節症のリスクも高くなります。

歯科の観点からも、氷食症の症状が見られた場合はすぐにかかりつけ医などを受診し、原因の解明と根本的な治療を行うことが望まれます。

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748