小児科医が臨床経験と知見をもとに、子育て中の皆さんの不安や迷いに寄り添う情報をお届けします。
第13回 子どもの運動発達を知る
子どもは生まれてから、驚くほどのスピードで多くの運動機能を身につけていきます。初めて首がすわった日、そして初めて歩いた日。こうした目に見える成長の瞬間は、家族にとっても強く記憶に残る出来事ではないでしょうか。
赤ちゃんの体の使い方は、実は、決まった順番や方向性があり、その流れを知っておくと、子どもの成長をより深く理解する手がかりになります。今回は、子どもがどのように運動スキルを身につけるのかをお話しします。
運動機能には2種類ある
子どもの運動機能は、医療や発達の分野では大きく2つに分類されます。一つは粗大運動、もう一つは微細運動です。
粗大運動とは、体全体を使う大きな運動のことです。たとえば、首がすわる、寝返りをする、歩く、走るといった動きがこれにあたります。
一方、微細運動とは、主に手先を使う細かな運動のことです。物をつかむ、スプーンを使うといった動きが含まれます。
粗大運動は「頭から足へ」発達する
粗大運動には、体の機能が頭から足へと発達していくという特徴があります。
赤ちゃんの粗大運動で最初に目立って発達するものの一つが、首がすわることです。一般的には、生後3カ月から4カ月ごろまでに首が安定してくる赤ちゃんが多いとされています。これは、頭や首を支える筋肉や神経の働きが育ってくることで起こります。
その後、赤ちゃんは寝返りをするようになります。首だけでなく肩や胸、体幹の動きが少しずつ加わってくるためです。さらに成長すると、お座りができるようになり、はいはいを始めます。骨盤まわりの力がより発達し、自分の体を支えられるようになることで可能になります。
そして、つかまり立ち、ひとり立ち、歩行へと進んでいきます。この頃になると、足の力やバランスを取る力が発達し、全身を使って移動できるようになります。
この流れを見てみると、子どもの粗大運動は、首から体幹、そして足へと、まさに頭から足に向かって発達していくことがわかります。
微細運動は「体の中心から指先へ」発達する
微細運動にも、発達の方向性があります。体の中心に近い部分から、より末端である手首や指先へと発達していきます。
赤ちゃんはまず、自分の手を口に持っていくようになります。これは、肩や上腕の動きが発達してくることで見られる動きです。その後、目の前にあるものに手を伸ばすようになります。腕や前腕を、目的に合わせて動かせるようになってきたサインです。
その後、手首や指の動きが発達してくることで、物をつかんだり離したりできるようになります。やがて、片手から反対の手へと物を持ち替えることもできるようになります。
さらに成長すると、指先の動きがより精密になり、小さな物を指でつまむ、スプーンやフォークを使う、箸を使うといった、より高度な手先の動きへとつながっていきます。
このように、微細運動は体の中心に近い肩や腕の動きから始まり、少しずつ手首、指先へと発達していくのです。
運動発達で注意して見ておきたいこと
子どもの運動発達のスピードには大きな個人差があります。一つの目安だけで過度に心配する必要はありませんが、注意して観察しておきたいポイントがいくつかあります。
明らかな左右差
一般的に、1歳を過ぎる前の赤ちゃんでは、右利き・左利きがはっきりしていることはほとんどありません。両手両足を同じくらい使うことが自然です。そのため、生後数カ月の時点で、いつも片方の手しか使わない、片方の足だけ動きが少ない、体の向きに強い偏りがあるといった場合には、少し注意して見ておくとよいでしょう。気になる場合は、小児科の先生に相談してみてください。
できていたことができなくなる
医療の世界では、これを発達の退行(developmental regression)と言います。一度身につけた運動スキルは、基本的にはその後も保たれていきます。しかしながら、ある時期を境に、それまでできていたことが急にできなくなった場合には、注意深く観察する必要があります。たとえば、以前は座れていたのに座れなくなった、といった変化がある場合には、小児科で相談することをおすすめします。
運動発達を正しく理解することは、子どもの体の成長を安心して見守るための大切な手がかりになります。発達の方向性を知っておくだけでも、子どもが今どの段階にいるのか、そして次にどのような力が育っていくのかを予測しやすくなります。気になることがあるときは一人で悩まず、かかりつけの小児科医や発達の専門家に相談してみましょう。
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