小児科医が臨床経験と知見をもとに、子育て中の皆さんの不安や迷いに寄り添う情報をお届けします。
第14回 子どもの食べムラをどう見守る?
子どもの食事について、「昨日まで食べていたものを急に食べなくなった」「好き嫌いが激しく、野菜をほとんど食べない」と心配になる保護者は少なくありません。今回は、子どもの好き嫌い、食べムラについてお話しします。
子どもの食欲は毎日同じではない
まず知っておきたいのは、子どもの食欲は一定ではないのが自然だということです。乳児期は成長が速いためいつも食欲旺盛に見えるかもしれません。しかし1歳を過ぎるころから成長のスピードはゆるやかになり、ミルクから一般食への移行も進むため、食欲や食事量が不安定になりやすくなります。また、風邪や胃腸炎といった軽い体調不良でも、数日間食欲が落ちることは珍しくありません。
好き嫌いは発達の一部でもある
小さい子どもに好き嫌いが出てくることは、発達の段階でよく見られ、特に2歳を過ぎた頃から表れやすくなります。「いらない」と自分の意思を示せるようになることも関係しています。そのため、昨日は食べたのに今日は食べない、同じ食品でも切り方や盛り付けが変わると食べない、といったことが起こりえます。また、幼児期は新しい食べ物に対して警戒が強く、見た目、におい、食感が少し違うだけで拒否することもあります。多少の好き嫌いや食べムラはあまり心配する必要はありませんが、数カ月単位で体重が増えない、または減っていく場合には慎重に見ていく必要があります。
食べる・食べないを4つの視点で考える
専門外来では、子どもの食べムラや食事の困難を考えるとき、「医学」「栄養」「食事能力」「社会心理」の4つの視点から整理することがあります。
- 1つ目は、医学的な問題です。胃食道逆流、便秘、呼吸の問題、神経や筋肉の病気など、食べること自体を難しくする身体の問題がないかを考えます。
- 2つ目は、栄養の問題です。体重や身長の伸び、鉄分やビタミンなどの不足、必要なカロリーや水分がとれているかを見ます。
- 3つ目は、食事能力の問題です。噛む、舌を動かす、飲み込むといった食べるために必要な口やのどの機能に問題がないかを確認します。
- 4つ目は、社会心理面の問題です。食事への興味の薄さ、食事中にむせた経験や、知らない食べ物への恐怖や不安、食卓でのプレッシャーなどを評価します。
これらの領域のいずれかに明らかな困難が認められると、小児摂食障害(PFD: Pediatric Feeding Disorder)という診断がつくことがあります。また、4つ目の社会心理によるものが大きな原因で生活に困難をきたす場合には、回避・制限性食物摂取症(ARFID:Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder)という診断が検討されることもあります。
つまり、「食べムラ」といっても、本人の努力や保護者のしつけだけで解決するものばかりではありません。強い不安やパニックがある、食べた物を飲み込むときにむせる、飲み込みにくさがある、といった場合には、医学的な背景が隠れている可能性もあります。
無理に食べさせないことも大切
1歳前後から幼児期の子どもがいつも食べていた物を急に食べなくなったとき、保護者からすると不安になるでしょう。しかし、嫌がっている子どもの口元に何度もスプーンを持っていく、泣いているのに口に入れようとする、といった対応は避けたいところです。食事が「怖い」経験になると、かえって食べ物への拒否感、いわゆるfeeding aversionが強くなることがあります。毎回の食事が戦いのようになっている場合には、いったん食卓のプレッシャーを下げることが大切です。たとえば、食べることを急がせず、まずは食べ物を手で触る、においをかぐ、なめてみるだけでもよいと考えます。子どもが自分のペースで食べ物に近づく機会を作ることで、食事への興味につながることがあります。
食事は、ただ栄養をとるためだけでなく、安心して家族と過ごし、新しい経験を広げる時間でもあります。子どもの好き嫌いや食べムラの多くは発達の中でよく見られるものですが、心配であれば早めに小児科医に相談しましょう。アメリカでは、小児科の健診でも食事や成長の様子を確認し、必要に応じて助言を行います。困ったときは気軽に相談してみてください。
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