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マウスウォッシュで2型糖尿病が防げる?〜健康な歯でスマイルライフ

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

マウスウォッシュで2型糖尿病が防げる?

歯周病がアルツハイマー病や2型糖尿病と関連することは、これまでもこのコラムで何度か取り上げてきました。歯周病が多くの全身疾患のリスクを上げるという研究論文は、年々増え続けています。最近、大阪大学の研究グループが、殺菌作用のあるマウスウォッシュが2型糖尿病を改善する可能性について興味深い論文を発表し、注目されました。今回はこの論文を中心に書いていきたいと思います。
研究の内容
殺菌作用のあるマウスウォッシュが、口腔内の歯周病菌で特に毒性の高いもの(Porphyromonas gingivalis、 Treponema denticola、Tannerella forsythia)と2型糖尿病に及ぼす影響については、十分解明されているとは言えません。研究は、それについて調べることを目的に行われました。
調査対象ですが、最初は350人から始まり、最終的に患者総数は173人(男性115人、女性58人)で、平均年齢は66.5歳(34~84歳)となりました。歯周病菌が6種以下で血糖値の指標であるHbA1cが6.5%以下、BMIが30.0kg/m²以上の人は調査の対象から外れ、また、途中で調査に協力できなくなった31人、あるデータが足りなかった21人も除外されたからです。
その方法には、最初の6カ月は1日1~3回、水で口腔内をゆすぎ、次の6カ月は1日1~3回、クロルヘキシジンという高い殺菌成分が入っているマウスウォッシュで口をゆすぐという研究デザインが用いられました。調査期間中は、1、2カ月置きに唾液を採取。歯周病細菌のDNAを調べ、存在する歯周病菌を同定しました。同時に、2カ月置きに血液を採取し、血糖値の指標となるHbA1cレベルをチェックしました。
研究の結果、わかったこと
(1)水でゆすいだだけの最初の6カ月間 は、口腔内の歯周病菌およびHbA1cに 影響を及ぼさなかった。
(2)その後6カ月間、マウスウォッシュで 口をゆすぐと、1日2回以上の場合、統 計学上有意な細菌叢の減少が見られた。
(3)HbA1cの変化においては全体のバラつきが大きく、マウスウォッシュで口を ゆすいだ場合でも、統計学的に有意な 効果が認められなかった。年齢の若いグループ(68歳以下)と老いたグルー プ(69歳以上)に分けて、水でうがいし た場合と比較すると、マウスウォッシュ でうがいした若いグループでより大きな 細菌叢とHbA1cの減少が認められた。
まとめ
殺菌力の高いマウスウォッシュで1日2回以上、口をゆすぐと、特に年齢が若い場合、歯周病菌の減少と2型糖尿病の改善が期待できるかもしれません。2型糖尿病で血糖値がなかなか落ちない方は、マウスウォッシュを試すのもいいオプションとなるでしょう。
中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748