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歯が黒く着色しやすい子ども〜健康な歯でスマイルライフ第194回

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

歯が黒く着色しやすい子ども

最近、ある患者さんから「子どもの歯がすぐに黒くなるのですが、どうしてなんでしょう?」と相談を受けました。確かに定期健診のたび、永久歯の前歯が黒く着色しているのです。聞けば、お茶、コーラ、コーヒーなど、歯が着色しやすい飲み物はほとんど飲まず、飲食由来の着色とは考えづらいとのことでした。また、虫歯はないため、フッ化ジアンミン銀など虫歯の進行を止める薬の類を使っておらず、薬剤による着色でもありません。では、着色の原因は何でしょうか。今回は、子どもの歯の黒い着色について書いていきたいと思います。

歯の着色はどうして起こる?

この患者さんの子どもは、毎日よく歯磨きをしても2、3日で黒く着色してしまい、最初は歯ブラシやガーゼなどで比較的簡単に着色を落とせるものの、徐々に着色が増えると取りづらくなるとのことです。そのせいで、6カ月健診の際にはかなりの着色が見られます。審美的な問題とあって、心理面からも悪影響が出るのではないかと心配しておられました。

歯の着色の場合、体の外から摂取される外因性、たとえば、お茶、コーヒー、コーラ、赤ワイン、タバコなのか、あるいは体の中で作られる内因性なのか、着色由来をまず考えます。お茶、コーヒー、コーラなどで起こる着色は一般的に茶色で、このケースと異なります。また、このような飲み物を好んでもいませんので、否定して良いでしょう。特に鉄分の多い薬やサプリメントなども着色の原因になり得ますが、これらも使用していません。つまり、外因性の色素由来とは考えにくいのです。子どもなので赤ワインや喫煙などの影響も除外でき、内因性の色素由来と見て間違いないでしょう。

今回のケースで考えられる歯の着色の原因

内因性となると、口腔内に常在している細菌叢さいきんそう の中で黒い色素を産生する細菌が異常に増加している可能性が疑われます。そうした細菌の種類には、アクチノマイセス(Actinomyces)やバクテロイデス・メラニノジェニカス(Bacteroides melaninogenicus)が挙げられます。色が黒くなるのは、これら細菌が産生する黒色の硫化鉄が原因とされています。

歯の黒い着色を有する子ども、有しない子どもを比較した研究では、着色を有する子どものプラークやだ液の中にアクチノマイセスが多く見られる傾向があると報告されています。また、一般的に歯の着色は、エナメル質の表面が平滑でない場合に起こりやすく、実際に今回のケースでもエナメル質が平滑ではない印象を受けました。

どれくらいの小児にこのような歯の黒い着色が見られるのでしょうか。統計によって異なりますが、全体の2.5~20%程度と考えられています。しかしながら、子どもの成長と共に細菌叢が変化し、次第に歯の黒い着色が消失するケースも少なくないと言われます。もちろん、大人になっても似たような黒い着色を起こすことはあります。

黒い着色が起こりやすい人はどうしたらいい?

歯の黒い着色を防ぐには、歯磨き粉を使い、歯磨きを徹底することです。歯磨きの回数を増やすのも効果的。必ずしもホワイトニング用の歯磨き粉でなくて良く、使っても問題ありません。

それでも黒い着色が気になる場合は、歯科医院での歯のクリーニングも、たとえば年2回のところを4回にと、増やしていく必要があるかもしれません。同じような悩みを持つ方は、かかりつけの歯科医に相談してみましょう

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748