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日本で「国民皆歯科健診」が義務化? 〜健康な歯でスマイルライフ 第182回

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

日本で「国民皆歯科健診」が義務化?

最近の報道などによれば、日本政府が「国民皆歯科健診」の導入を検討しているとのことです。
現在、日本で歯科健診が義務付けられているのは、1歳半と3歳、および学校に通う高校生までの子どもですが、年齢にかかわらず全国民が1年に1回、歯科健診を受けることを義務化しようというものです。実際に義務化の法案が可決されたとしても、実施は数年先になるだろうと言われていますが、今回はこの話題を中心に書いていきたいと思います。

歯科健診義務化構想の背景

厚生労働省の報告書によれば、日本の歯科健診の受診率は高いとは言えない現状がまずあります。2016年度の調査において20歳以上の過去1年間の受診率は52.9%であり、また歯周疾患検診に至っては、2018年度の調査において40歳以上の過去1年間の受診率は5%に過ぎません。
近年、日本でも歯科の重要性に対する認識が高くなってきていますが、まだまだ問題が起きないと歯科を受診しないという人は一定数根強く残っているものと思われます。日本政府による歯科健診義務化の最大の狙いは、少子高齢化が進む中で国民の口腔環境を改善し、医療費全体の高騰を抑制することにあります。

口腔環境と医療費の関係

医療費に関して口腔環境が与える影響については、サンスターグループの研究データ(2021年6月30日発刊の日本歯科医療管理学会雑誌 第56巻第1号)が参考になります。20歳から74歳までの労働者約25万人の定期健康診断結果と医療機関の診療情報(診療報酬明細書=レセプト)を基に、歯の本数、かみ合わせと、医科医療費の関係を分析したものです。
その研究結果により明らかになったのは、歯の本数が多いこと、上下の歯がそろいかみ合わせが良好なこと、歯の本数が同程度でも上下の歯がかみ合う領域が多いことで、より医科医療費が抑えられているということです。つまり、なるべく多くの歯を残し、上下の歯でかめる状態を保持することが、医科医療費の抑制と全身の健康維持に重要であると示唆されたわけです。
同研究が今回の政府の提言につながっているかどうかは定かではありませんが、その可能性は大いに考えられます。

まとめ

これまで本コラムでも紹介してきましたが、高齢者において歯の残存数が多いと認知症が少ないとの研究報告(BMC Geriatrics 18; 48, 2018)も出ており、歯の健康は全身の健康につながるという認識は世界的に一般化しつつあります。毎日の歯磨き、フロスの使用など口腔清掃を徹底し、定期的な歯科健診を続けることで、全身の健康と医療費全体の削減を実現できるかもしれません。皆さん、地道に頑張りましょう。

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748