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和厨/wa’z〜人気のお店訪問

ベルタウンの名店「wa’z(和厨)」で京都仕込みの懐石を提供し続けて8年。オーナーシェフ、たわら 裕和さんが大切にしてきたのは、日本の食文化を伝えるという思いでした。

取材・文:山本拓実

和厨/wa’z

シアトル・ダウンタウンのざわめきが続くベルタウン。その一角で扉を開けると、不意に空気が変わる。行灯あんどんのやわらかな光に包まれた和の静寂——「wa’z(和厨)」だ。おまかせの懐石コースだけを提供する、シアトル初の懐石専門店。京都で10年腕を磨いたオーナーシェフの俵さんが2018年に開いた。コース内容は毎月組み替えられ、季節のテーマに沿って一皿一皿が構成されていく。

シェフの手元が見える、趣あるカウンター

2005年に渡米した俵さんは、シアトルの寿司店で腕を磨き、「しろう寿司」で名匠・加柴司郎かしばしろうさんのそばに立った。ウニを敬遠する客に「一度食べてみてください」と勧め、初めての一口に喜ぶ姿を間近で見たという。伝えることが客の喜びになる——その光景は今の俵さんの原点となっている。そのため「wa’z」では、カウンター越しに料理が仕上がっていく様子も味わいの一部となる。一品ごとに俵さんの言葉が添えられ、器に込めた意味や季節の見立てが語られる。あえてネタケースを置かないのも、隠すものは何もないという姿勢の表れだ。

俵さんは、京都の懐石をそのまま出すのではなく、シアトルで親しまれる形へと工夫を重ねてきた。客が一口で「おいしい」と感じる、うま味と香りの立った味を基本に、料理はリズムよく運ばれる。量もたっぷりと——「足りないとだけは言わせたくない」と笑う。自らが選んだ器に季節の見立てを盛り込み、熟成させた本鮪を塊のまま見せてから握る。舌だけでなく、目でも手でも、五感で懐石を味わってもらうためだ。看板の先付け「揚げごま豆腐」もその思いの象徴。カリッと揚げた胡麻豆腐にウニと餡を重ねたこの一皿は、訪れる客の緊張をそっとほどき、本格的な懐石の奥行きへと誘う。

看板の先付け「揚げごま豆腐」

この思いは、料理だけに留まらない。同店で懐石を体験した客が後に京都を訪ね、感想を伝えにまた店に戻ってくることもある。日本へ発つ客には、俵さん自らがおすすめの店を書いたリストを手渡すこともあったという。また、同店での体験をきっかけに初めて日本を訪れる客もいる。

日本とシアトルをつなぐ店」でありたい。その思いは、和食と日本の文化、人と人をつなぐ「和」、そしてワシントン州を表す「WA」を重ねた店名「wa’z」にも込められている。日本の四季と心を伝え続けてきた俵さんの懐石。静かに料理と向き合いたい特別な夜に、訪れたい一軒である。

 

和厨/wa’z

411 Cedar St., Seattle, WA
営業時間:水木6pm、金土5pm・8pm 、日1pm ・5pm 定休:月火
問い合わせ:☎︎206-441-7119、info@wazseattle.com
詳細:www.wazseattle.com instagram:@wazseattle