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最新の補聴器

70歳の彼女と初めて会ったのは、去年のサンクスギビング前日だった。補聴器を使っていたご主人がすでに他界して、現在1人暮らしだった。ご主人が補聴器を使っていたのは10年ほど前のことなので、補聴器にあまり期待も持っていなかったし、最新の補聴器事情も知らなかった。

彼女は上品なご婦人で最新のテクノロジーからほど遠いように見えたが、手には iPhoneを握っていた。話を聞くと、まだデパートで正社員としてレジ打ちや商品の補充をしているそうで、ブラックフライデーのため、来院した翌日の夜は夜通し働くということだった。ここ数年徐々に聴力の衰えを感じ、勤務中や家のテレビの話が聞き取りにくいので、補聴器を試してみようという気になったそうだ。ちょうど去年頃から、彼女の保険プランで補聴器の購入を援助してくれるようになり、そのお知らせを読んだことが、今回の来院の直接のきっかけとなった。この数年中に、パートタイム扱いになるよう希望しているようだが、まだ引退は考えていないと答えていた。

彼女の聴力結果は中度の難聴で、言語テストではかなり大きな音量でないと、完璧に内容を聞き取れない状態だった。よくこの聴力レベルで、音楽がバックグランドで流れているようなざわざわした職場で仕事がこなせているものだと感心した。過去に大きな音を浴びたことが聴力低下の原因となっているようだと説明したところ、20代の頃に耳栓なしで飛行機の近くで働いていたことを思い出してくれた。その他には思い当たる出来事はなさそうだった。50年前の出来事が、聴力に影響を与えることに少し驚いているようだった。

補聴器は、iPhoneと連動して使用できるものを選ぶことになった。携帯電話をリモートコントローラー代わりにして、必要に応じて設定や音量などを変更できる。そのような補聴器があることを彼女は知らなかったので、今までの補聴器のイメージが一新されたそうだ。補聴器を初めて装着した時、補聴器が入っている感覚がないのに、私の話がよく聞こえるとコメントしていた。1カ月の評価後、補聴器をそのままキープすることとなった。レジでのお客さんとのやりとりも聞き取れるようになったし、同僚との会話もしっかりできるようになり、仕事を楽しんでいるそうだ。


今回、保険会社が補聴器の購入を援助してくれるオプションが付いたので、彼女は一般価格よりも安く補聴器を購入することができた。さまざまな形で、保険会社が患者の聞こえをサポートする状況になってきているのは非常に望ましいことだ。そういったオプションがあることを知らない方もたくさんいるようなので、保険会社に確認しておくことをお薦めする。

70歳で徹夜勤務、現役バリバリの彼女に会って、私も身体の続く限り仕事をしていきたいと強く思った。

ワシントン州と米国認定のオーディオロジスト。ワシントン大学で Speech and Hearing Sciences: Communication Disorders で学士号、Doctor of Audiology プログラムで聴覚博士号を取得。2012年にPAC Audiology クリニック オーディオロジスト(耳の専門医) を開業。 PAC Audiology クリニック オーディオロジスト(耳の専門医) 1605 S. Washington St. Suite 6, Seattle, WA 1370 116th Ave. NE, Suite 201, Bellevue, WA ☎ 425-455-0526