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耳かけ式補聴器? 見えない補聴器?

この数カ月、ジェネレーションギャップを感じる出来事がいくつかあった。まずは60代前半の男性。大手ファッション業界の営業を何十年も務めてきた彼だが、ここ10年ほど聴力が落ちてきて、耳鳴りが少しと、左耳がつんとするような感覚が起きていた。検査の結果、全音程で正常な聴力はなかった。覚悟はあったが、60代になったばかり。補聴器に躊躇する彼は、できる限り見えない補聴器を希望した。さらに、スマートフォンで操作できるものが良いと言う。それだと、耳の後ろに付ける補聴器になることを伝え、翌週には営業集会があるという彼に、耳かけ式のものを貸し出した。

1週間後、補聴器返却の際、借りたおかげで集会を楽しめたと報告を受けた。久しぶりに会った同僚が補聴器を付けていて、いろいろと話したそう。同僚の耳かけ式補聴器も試したいと、それを貸し出すことになった。その返却日には、外には見えない補聴器にも未練があると告げられ、耳穴
式の補聴器を購入してもらうことにした。やらずに後悔するより、やって正しい選択をと進言したのだ。彼が選択した補聴器はあまりにも小さく、スマートフォンとの連動はできない。彼は小ささに満足したが、2週間後にはそれを返品し、以前試した耳かけ式に変更すると言う。音質が気に
入っていて、補聴器を外に見せて装着することにも違和感がなくなってきたのと、補聴器が仕事に助かっているという実感を持つようになったからだ。

一方、同時期に、20代半ばの女性が聴力検査と補聴器のカウンセリングで来院した。彼女は、慢性の中耳炎が原因で真珠腫性中耳炎を患い、最近2度も耳の手術をしていた。小さい頃から補聴器を付けていたのだが、ティーンエイジャーになって周囲の目が気になり、付けるのをやめてい
た。当時の小児用補聴器は、かなり大きく目立っていた。彼女の聴力は、左右で全く異なり、一部正常な部分があったので、耳かけ式を勧めて補聴器を貸し出した。大学を卒業して医療機器関連の仕事に就いた彼女はまだ若く、週末には友人たちと夜通し遊ぶそうだ。仕事でも友人との会話でも聞きづらいことがよくあり、何とかしなくてはと思ったと話す。補聴器を返品しに来た彼女は、購入を即決。非常に助かったし、スマートフォンでいろいろ操作できるのも良かったと言う。補聴器のおかげで周囲が親切にしてくれて仕事がやりやすかったので、補聴器を見せたほうが良いとも語っていた。前出の男性とは正反対の感想。

聞きづらいと感じるようになって、実際に行動を起こすのは短くて7年と一般に言われている。中高年の方々も若い人を見倣い、生活向上や体に良いものは積極的に取り入れてくれると良いのだが。

ワシントン州と米国認定のオーディオロジスト。ワシントン大学で Speech and Hearing Sciences: Communication Disorders で学士号、Doctor of Audiology プログラムで聴覚博士号を取得。2012年にPAC Audiology クリニック オーディオロジスト(耳の専門医) を開業。 PAC Audiology クリニック オーディオロジスト(耳の専門医) 1605 S. Washington St. Suite 6, Seattle, WA 1370 116th Ave. NE, Suite 201, Bellevue, WA ☎ 425-455-0526