栄養学で若返り!スローエイジング
ゆっくりときれいに年を重ねることを目指す「スローエイジング」という考え方。更年期が気になる大人の女性に向けて栄養学の発展したアメリカ在住だからこそ実践したい、元気で若い体づくりを提案します。
腸内フローラと自己免疫疾患
「腸活」というワードもすっかり定着しましたね。平均4.57メートルもの長さがある腸の中では約100兆個の菌(腸内フローラ)が繁殖し、私たちの健康や代謝を保っています。近年、善玉菌と免疫細胞の関係も明らかにされ、自己免疫疾患の予防と症状軽減が期待できるとのリサーチ結果も。更年期の女性に多い、甲状腺機能が低下する橋本病も、そうした自己免疫疾患のひとつです。今回は腸と免疫細胞の関係、そして腸活に良いとされる栄養素を紹介します。
有害物質から腸を守る
私たちの免疫細胞の80%以上は腸内に存在していますが、これには大きな理由があります。私たちの体は日々、さまざまな物質に囲まれ、何を体内に吸収するかを逐一判断しています。体にとって有害であるウイルスやばい菌、食品添加物、化学物質、処方薬、アルコールなどは、胃を通過して腸まで運ばれますが、ここで腸内フローラと免疫細胞が重要な役割を果たします。お互いにコミュニケーションを取り、どれを吸収し、どれを排出するかを決めるのです。体内に良くないものが吸収されてしまった場合も、血液を通って体内に循環しないよう、腸内の免疫細胞が炎症を引き起こす物質を作り、良くないものを排出させます。つまり、吸収の最初の入り口となる腸では、たくさんの免疫細胞が腸内フローラと協力して体内への循環を防いでくれているのです。
また、腸壁は善玉菌によって作られる粘液状のバリアにより守られ、さらに悪いものを吸収しないようにできています。しかし、多忙な現代人は毎日のストレスや食品添加物、飽和脂肪酸、加工砂糖などの過剰摂取により、この腸内バリアが崩れてしまうことも。1層しかない腸壁はダメージに弱く、免疫細胞が機能せずに悪いものを吸収しやすくなってしまうリーキーガット症候群(腸漏れ)にかかる恐れも出てきます。そうなると、有害物質が取り込まれるたびに血中の免疫細胞が反応して炎症物質を作り、抗体を過剰生成することで、結果として健康な細胞まで破壊してしまいます。橋本病、リウマチ、第1型糖尿病といった自己免疫疾患につながりやすいことも研究で証明されつつあります。胃腸の病気や自己免疫疾患の症状軽減に、まずは食生活や習慣を見直し、腸内環境を改善することが望まれます。
栄養面から腸内環境を改善
自己免疫疾患の予防、症状の軽減には、腸内の善玉菌と免疫細胞を活性化させると同時に、腸膜を守る腸内バリアを強化することが欠かせません。腸内バリアを作る粘液生成に欠かせない腸内フローラは、プバイオティクスという食物繊維をエネルギー源としています。また、善玉菌はこのプバイオティクスの発酵により短鎖脂肪酸という物質を作り、腸細胞のダメージや炎症を緩和して、さらに腸内バリアの機能を高めます。
日頃から腸内フローラが好む以下のプバイオティクスを食事から取り入れ、腸内環境の改善を目指しましょう。
- イヌリン:玉ネギ、ニンニク、ショウガ、アーティチョーク、バナナ、オーツ、アスパラガスなどに豊富。水溶性で粘着性があり、消化に時間がかかるので、食欲や血糖のコントロールに最適。
- B-グルカン:全粒穀物、キノコ類、海藻類などに含まれ、悪玉コレステロール値を下げる効果も期待できる。イヌリンと同様に水溶性。腸の筋肉を刺激して、便秘解消も。
- ポリフェノール:ベリー類、 チェリー、グレープ、ダークチョコレート、またコーヒーや緑茶などから摂取でき、腸内フローラの栄養源に。腸内の炎症を軽減する役割も果たす。
抗生物質を服用する際の注意点
抗生物質は菌感染をした際など菌を死滅させるのに有効な処方薬ですが、実は同時に腸内の善玉菌も攻撃してしまいます。すると、腸内バリアが作れず体内に悪いものが入りやすくなり、炎症や自己免疫疾患を引き起こす原因になることも。抗生物質を処方された場合は、抗生物質耐性菌が繁殖しないように、服用量と服用期間を守ることが大事。抗生物質に抵抗がある方は、自然医療によるオレガノやペパーミントなどを用いたハーブ治療も検討しましょう。
抗生物質の副作用を軽減するため、腸内細菌を増やすプバイオティクスのサプリを同時に服用する方がいますが、抗生物質はサプリの菌も減らします。プバイオティクスは、抗生物質服用の2時間後というふうに間隔を空けて飲むことをおすすめします。もちろん、プバイオティクスの豊富な食べ物を食事に取り入れることも忘れずに。
(参考記事)
腸管免疫に関して
ポリフェノールと腸の健康の関係