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自己認識と自己肯定

Aさんはアメリカの会社に派遣されて2年目です。仕事ももちろん忙しいのですが、職場の人間関係や同僚とのコミュニケーションが思い通りにいかず疲れているらしく、最近はお酒とたばこの量も増え、不眠もあるそうです。そんなAさんを心配した会社の人のすすめでコーチングを受けに来られました。
Aさんはコーチングで何を話せばよいかわからないとのことだったので、自己紹介がてら日頃の生活や職場環境について話してもらいました。その中で、Aさんがよく反省することに気付きました。例えば『チームに迷惑をかけていて、申し訳ない』『学習能力が低くって自分で嫌になる』『使えない奴だと思われていても仕方ない』『もっと積極的になる必要がある』『自分の英語力をもっと上げるべき』『もっと頑張らないといけない』などです。そのことをAさんに伝えると、Aさんは気づいていなかったそうで、『気負いすぎですかね?』と自嘲的におっしゃいました。
Aさんは自分に厳しく真面目な方なので、このような反省が出てくるのでしょう。しかし、反省点ばかりにフォーカスして自己認識ができていない状況は、無理をしがちだったり、独りよがりになって、周囲との関係も悪くなる傾向があります。そこでAさんに、ご自分のことを客観的に見つめていただくために、以下のような質問に対し5段階評価してもらいました。『今の自分は幸せか?』『健康的な生活をしているか?』『今の自分は誇れるか?』『自分が思う仕事における貢献度は?』『キャリアにおける達成度(成功度)は?』結果は全て低評価でした。これらの数値を見てどう思うかAさんに尋ねたところ、『よくないですねぇ』とのこと。ストレスの大きさを確認した形になりましたが、それでも『自分なりに頑張っているが、仕事での結果も出ていないから、ある程度のストレスは仕方ないんですよ』とおっしゃいます。
多くの人が、結果を出して成功を収めれば幸せになれると信じて、成功を追い求めるがゆえに頑張りすぎて、その努力の過程で自分と周りを疲弊させ、幸せを後回しにしてしまっているという研究があります。Aさんの状況は、まさにその状態であると言えました。反省は自分を成長させるのに大切な行動です。しかし、反省が過ぎると自己批判になってしまい、自分を傷つけたり自信を喪失してしまう事になりかねません。幸せであることが成功の秘訣ですから、自分を褒めてあげること、励ましてあげること、認めてあげることが必要です。
Aさんに『自分の親友が、今の自分を見てどんなふうに言ってくれるのか?』を想像してもらったところ、『結構頑張ってるんじゃない? と、多分言ってくれると思う』とのこと。やっと、Aさん本人から自分の努力を認める言葉を聞くことができました。
Aさんには自己認識と自己肯定感の向上のために、親友だったらどう言ってくれるか? を考えながら、日記を書いてもらうことにしました。反省点の改善に取り組むのと同時に自己批判のループを断ち切ることで、生産性や創造性、レジリアンス(打たれ強さ)、人間関係の改善、幸福度アップと自尊心の確立が期待されます。

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