Aさんはご主人の仕事の異動に伴い、引っ越してこられました。まず驚いたのは、シアトルのアジア人の多さでした。以前住んでいたところはいわゆる白人のアメリカ人ばかりで、日本人であるAさんは明らかに周りから浮いていて、でもだからこそ、みんなが声をかけてくれて特別よくしてもらっていたんだと今になって気付いたそうです。逆に今は、日本人もたくさんいるけれど自分が属する場所がなくて不安だとおっしゃいます。子供つながりのイベントや趣味の集まりなどに参加していますが、いわゆる派閥みたいなものがあるようで、どうするべきか悩んでいるそうです。
「人間は群れる動物だ」と言われます。ほかの人と繋がりたい、所属する場を確保して安心したい、というのは人間の自然な性質と言えます。だからこそ、いろんなグループが存在し、それぞれのグループには特色やカラーがあって、時には他のグループと対抗するものまであるのです。自分にあったグループに所属できればよいのですが、そうでないと居心地の悪い思いをすることもあり得ます。そこでAさんには、自分に合ったグループの見分け方と、自分が求めるお付き合いについて考えてもらいました。
派閥の本来の意味は「出身や縁故、利権などによって結びついた排他的な集まり」と定義されています。例えば、会社で出世のための派閥をイメージするとわかりやすいかもしれません。各派閥には、そのトップにいる人のカラーが反映され、その派閥に所属していれば、メリットとして特別な人脈や情報を得ることができます。多くの場合、複数の派閥が存在し、競争関係にあります。場合によっては敵対していて、そうなると閉鎖的な色彩を帯びてきて身内以外の悪口もでてきますし、派閥の外での交流もままなりません。このような状態は、足の引っ張り合いでしかなく、非生産的で意味のないものになります。しかし、お互いが競い合って上を目指すのであれば、対抗心も良いものです。健全な緊張関係をもったライバルと言えるでしょう。このように、派閥があること自体は悪いことではなく、派閥のありかたが問題になってくるのです。
Aさんには上記の例から気づいた点を、自分に当てはめて考えていただきました。そこで以下のことが分かりました。
① まずは自分が所属するグループから得られるメリットが何かをはっきりさせ、それによって明確な意思をもって所属するグループを選択すること。
② グループのありかたやカルチャーに賛同できるか自分に問いかけること。例えば、グループ以外の人をおとしめることに力を注いでいるようであれば、所属する意味を考え直してみること。
③ 適度の競争心がもてるのであれば、その環境から得られるものは「所属する安心感」以上のものになるので、チャレンジしてみる価値もあり。
④ これだ! というグループが見つからないのであれば、どこにも属さないこともあり。
良い指導者は、色々な派閥があることを前提に、どうしたら各派閥を活用していけるかを考え、全体としての和を作り出すと言われています。上手なお付き合いのコツは、ここにあるのかもしれません。
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