Home ビジネス シアトル駐在員日誌 紀文食品 神尾 暁さん

紀文食品 神尾 暁さん

シアトル駐在日誌

アメリカでの仕事や生活には、日本と違った苦労や喜び、発見が多いもの。日本からシアトルに駐在して働く人たちに、そんな日常や裏話をつづってもらうリレー連載。

取材・文:磯野愛

#18 神尾 暁 KIBUN FOODS USA, INC (紀文食品)
◼️千葉県出身。2018年9月よりシアトルに駐在。 華の独身生活を謳歌中! と言いたいところだが、最近はつい寂しさのほうが勝ってしまうことも……。

大学では海洋学部に所属し、食中毒の原因となる菌の研究をしていました。紀文食品(KIBUN FOODS USA, INC.)を選んだのは、その知識を生かして食品会社で品質管理の仕事に就きたいと考えたからです。2007年に入社すると、まずは製造の現場を知るところからスタート。横浜工場に配属となり、「サラダしたらば」という、いわゆるカニ風味かまぼこを担当しました。実際に製造ラインに入って、機械でスケトウダラなどの材料を練り、梱包まで行う肉体労働の日々でした。大変な毎日ながらも工場での徹底した衛生管理を目の当たりにできたのは貴重な経験で、衛生管理の大切さを自分自身に徹底的に叩き込むことができました。

その後、東京の本社の購買部に移り、商品の原材料を調達する部署に所属。担当したのは、でん粉、小麦粉や大豆油、大豆たんぱくといった穀物由来の原材料調達です。所属社員は皆、各自担当する原材料のエキスパート。無知だった私は毎日のように勉強し、サプライヤーさんや周りの先輩からもたくさんのことを学ばせてもらいました。ここでの勤務は本当に楽しかったです。

そして、シアトルに来る直前には赴任準備もあり、国際事業室へ。5カ月間、主に紀文グループの海外拠点への輸出業務を担当しました。紀文はアメリカのほかに、タイ、香港、韓国、台湾、シンガポール、オランダに進出しています。タイには工場もあって、世界に向けて商品を製造・輸出しており、また香港では、フードコートに店舗を構えるなど幅広く事業を進めています。実は、紀文食品で海外勤務を希望する社員はあまり多くありません。私は子どもの頃、親の仕事の関係で5年半、ニューヨーク州とイリノイ州で暮らした経験があり、英語圏で働いてみたいと思って、今回の転勤を志願しました。

雄大な玄蕎麦畑にて

オフィスはベルタウンにあり、総勢17名(うちロサンゼルスに1名)が勤務しています。紀文と聞くと「かまぼこ屋さん」のイメージが強いかと思いますが、私が現在勤務する国際営業部は、北米・中南米で管轄する原材料の売買を紀文グループ以外にも広げて行っている、言わば商社のような部署です。取り扱う商品は、アラスカの工場から買い付けるスケトウダラのすり身や、豆乳製造用の大豆、そばの実など。また、生鮮食品もメキシコ産のカボチャや米国産のジャガイモ、玉ネギなどを扱い、輸出入合わせて商品は約30品目に上ります。

もちろん、日本やタイの工場で製造した、かまぼこやおでんに代表される紀文商品を販売する部署もあります。目下の注力商品は「ヘルシーヌードル(こんにゃく麺)」。コストコでも販売しており、1人前でたった25カロリーです。帰国子女とはいえ、英語には苦戦中。特に電話が苦手で、英語での会話を同僚に聞かれるのが気まずくて、部屋にこもって電話することも多々あります。オフィス内での会話は基本的には日本語なのですが、英語力強化のため、私に仕事を教えてくれているネイティブスピーカーの上司・同僚とは英語で話すようにしています。

平日は自宅と会社の往復で終わってしまいがち。飲みに出ることが好きなので、金曜日と土曜日はベルタウン周辺を飲み歩きします。自宅にも近いアイリッシュ・パブのケルズでは、顔なじみもできました。上司にならい、プライベートを充実させるべくゴルフも始めました。学生時代に打ち込んでいたテニスも、またやってみたいですね。

週末よく飲みに訪れるアイリッシュパブケルズにて常連さんとの一コマ

紀文食品は、おかげさまで昨年80周年を迎えました。Kibun Foods USAの今年のテーマは「新規」。購買部での経験も生かしながら、文字通り、新規の販路拡大を目指して頑張っていきたいと 思っています。

2020年6月まで北米報知社でセールス・マネジャーを務める。北海道札幌市出身。2017年に夫の赴任に伴ってシアトルに渡るまでは、日本で広告代理店に勤務し、メディア担当、アカウント・エグゼクティブとして従事。ワシントン大学でMBA取得後、現在はシアトル発のスタートアップ、Native English Instituteのマーケティング担当として日本市場参入準備に携わる。趣味はテニスで、大会(とその後の打ち上げ)の再開を心待ちにしている。