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第38回英文法の参考書を訳してみよう(1)〜技あり! 機械翻訳達人への道

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

第38回 英文法の参考書を訳してみよう(1)

【今回の例文】

Comma

Commas are separators. Often, a comma indicates a pause. But it’s a mistake to think that the only guideline for using commas is to insert one in any place where a pause would go. For example, compare the following:I talked to my brother Steve. (I have more than one brother.)I talked to my husband, Stan. (I have only one husband.)Both of these can be correct due to the comma’s job of setting off nonrestrictive, that is, nonessential information. For sentences like these, thinking of a comma as merely a pause would lead to errors.
(出典:The best punctuation book, period.)


【機械翻訳】

カンマ

カンマは区切り文字です。多くの場合、カンマは一時停止を示します。しかし、カンマを使用するための唯一のガイドラインは、一時停止が入る場所にカンマを挿入することであると考えるのは間違いです。たとえば、以下を比較してください。私は弟のスティーブと話しました。 (私には複数の兄弟がいます)夫のスタンと話しました。 (私には夫が一人しかいません)非制限的な情報、つまり必須ではない情報を示すカンマの役割により、これらは両方とも正しい可能性があります。このような文の場合、コンマを単なる一時停止と考えると間違いが発生します。 (Google翻訳)

【修正後】

カンマ

カンマは区切り記号です。多くの場合、カンマは休止を表します。しかし、カンマを使用する上で、「文章の区切りに挿入すること」を唯一の決まりだと考えるのは間違いです。たとえば、以下を比較してみましょう。私は弟のスティーブと話しました。 (私には複数の兄弟がいます)夫のスタンと話しました。 (私には夫が一人います)どちらも正しい文章です。というのも、カンマには非制限的な情報、つまり本質的でない情報を区切る役割があるからです。しかし、このような文の場合、カンマを単なる区切りと考えると誤用につながります。


今回は、英文法の参考書から「カンマ」の項目を取り上げました。読みやすさや文章のつながりに気を付けて訳してみましょう。

今回のポイント✅

① 不自然な日本語は主語を変えてみる

機械翻訳の「カンマを使用するための唯一のガイドラインは、一時停止が入る場所にカンマを挿入することであると考えるのは間違いです」という文章は非常にわかりにくいですね。その理由は、「ガイドライン」が主語になっているからです。修正訳では、「『文章の区切りに挿入すること』を唯一の決まりだと……」のように、主語を変えました。さらに、ガイドラインを決まりに訳し替え、「 」で括ることで、かなり読みやすくなります。

② 私には夫が1人だけ?

my husband, Stanのようにカンマを挟むことで、夫は1人だけだと限定されます。「私には夫が一人しかいません」と訳した機械翻訳も間違いではありませんが、「一人しかいなくて残念だ」のようなニュアンスになってしまうため、修正訳ではシンプルに「夫が一人います」にしました。

③ 接続詞を補おう

最後の段落は、「これらの文章は文法的には正しいが、気を付けないと誤用する可能性がある」ということを説明しています。英語では、前後の関係が明確な場合、andやbutが省略されることがよくあります。そのため、日本語では意味を補った方が親切です。

まとめ

普段よく使っているカンマですが、挿入する位置を間違えると、大きな誤解を招くこともありそうです。日本語同様、英語も句読点の用法は奥深いですね。

シュレーゲル 京 希伊子
フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダにも居住経験があり、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。