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愛媛大学グローカル地域研究プロジェクト

シアトルの日系スーパーマーケット、宇和島屋(うわじまや)。コミュニティーに根づいた家族経営を行う同店は、米国で最も成功した日系スーパーとして日本からも注目されています。今回はそんな宇和島屋の歴史をひも解きます!

取材・文: 佐々木志峰

ノースウエストでの宇和島屋の成功は、日本からたびたび注目され、今では森口ファミリーのゆかりの地、愛媛県の大学研究プロジェクトにも取り上げられている。愛媛大学の「グローカル地域研究ユニット」は、最近2回にわたり調査チームを派遣、創業ファミリーの森口一家や宇和島屋顧客へのリサーチを行っている。

研究では愛媛という「ローカル」な場で培われた物、意識、技術が、「グローバル」に広がり根付いていく過程を分析。「愛媛生まれ」の宇和島屋が、「米国で最も成功した日系スーパーマーケット」と評価されるまで発展した要因や、日系移民として日本とのつながりと影響を探る。調査チームも「宇和島屋の実践・経験は、地方発の日系企業が海外で事業展開する際の参考となる」と捉えている。

昨年9月には、「地元米国人に認知され、アジアのシンボル的な存在」となった宇和島屋とコミュニティーの関係について、研究リーダーの佐藤亮子准教授が聞き取り調査を行った。今年3月はシアトル、ベルビュー両店で一般客へのアンケートを実施、日系、アジア系にとどまらない幅広い客層から支持される宇和
島屋の姿を追った。

宇和島屋の歴史をひも解くと、労働者への現地販売、第二次世界大戦後のシアトル移転と移民増加、現在に続く日本文化への理解とアジアブームなど、「時代ごとの商機」という追い風に乗ってきた。佐藤准教授は「日系のアイデンティティというものが他と混じっていく中で、これから『日本』がどのような強みとして残っていくのか。何を大事にするかという考え方も愛媛として興味深いです」と話している。

調査報告は一部ウェブサイト(ipst.adm.ehime-u.ac.jp/glocas)で見ることができる。報告書は論文にまとめられ、国際シンポジウムなどでの発表機会を伺っていくという。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。