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子どもの栄養となる言葉かけを

言葉には力があります。ポジティブな言葉かけは子どもの健全な成長につながります。どのような言葉かけが子どもに勇気、やる気、元気、安心を与え、自信、自己肯定感に導き、自尊心を育てるのでしょう?

専門家に聞きました

ノーラ・コーリ■ 世界のお産と子育てを調査する海外出産・育児コンサルタントとして活動後、海外在住の日本人家族のメンタルヘルス・ケアを専門とする国際精神医療ソーシャルワーカーに。大人の知的・身体障がい者のデイサービスの施設長、児童虐待や家庭内暴力に関連するケースを扱う沖縄・米軍基地内家庭支援センターのカウンセラー職も経験。2023年、シアトルに移住。執筆、講演、医療通訳を手がけ、著書に『世界から学ぶ幸せな子育て』(リーブル出版)などがある。
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親がかける言葉で子どもは育つ

これまで、海外出産・育児コンサルタントとして多くの子どもたちと接する中で、親の言葉かけで著しい成長を遂げた子どもを見てきた一方、親の言葉かけで傷付いた子ども、自尊心に欠けた子どももたくさんいました。言葉は子どもを生かすことも殺すこともできます。私たちは、口から出るひとつひとつの言葉に注意を払い、意識しなくてはならないでしょう。子どもは、勇気を与える言葉、気持ちが明るくなる言葉、元気が出る言葉、心が落ち着く言葉、安心できる言葉、自信がつく言葉といったポジティブな言葉かけを栄養にして育ちます。

私は小学校をアメリカで過ごし、中学は日本、高校と大学はカナダでした。その後、子どもたちをシンガポールで育て、さらに思春期の子どもたちとアメリカで暮らしました。北米の子育てに影響を受けながら、子どもたちには、次の3つの柱を軸に言葉をかけていました。

1. 自信をつけ、勇気を生む言葉かけ

日本では子どもを親の一部として捉えがちで、自分を褒めるのは自慢気に受け止められるとして、子どもを褒めることはあまりしません。子どもを褒められても、「いやいや、そんなことはありません。もう、おっちょこちょいで」というように、褒められたことを否定し、謙遜します。

しかし、子どもは自分の自信につながる言葉かけを待っています。自信を持つと、さまざまなことに挑戦するための勇気が生まれます。また、自分の努力によって成した功績・結果を認められたと感じることで、自己肯定感もつきます。子どものためには、謙虚な姿勢を取るのではなく、失敗してもめげず、新たに挑戦する力が育つような言葉かけを心がけて欲しいのです。

言葉かけの例

「〇〇(子どもの名前、以下同じ)なら絶対にできる」

「〇〇ちゃんはいいところがいっぱいあるんだから」
「よく頑張ったね」

「まずはやってみたら? やらなければわからないし、やったことでわかることもあるじゃない」

「ほかの考えもあるんじゃない? いいほうに考えようよ」

「いいよ、失敗は誰にでもある。失敗しても、そこから学べばいいんだから。転んだらまた起き上がればいいんだよ」

「明日になったらまた新しい1日だ」

「人生はやり直しがきくよ」

「It’s not the end of the world」

「You always have a choice」

2. 思いやりや優しさを育む言葉かけ

親は優しい子どもになって欲しいと願うものです。では、優しさはどのように育つのでしょうか?必要なのは、親が注ぐ無条件な愛を受けること。「愛されている」、「幸せ」と常に感じながら育つ子どもは、安心、充実、満足、余裕を得られます。そして、その愛や優しさをほかの人に向けられるようになるのです。

幸せは、イベントでもなければ、欲しかったものによって手に入るわけでもありません。幸せとは、もうすでに自分の中にあるものを幸せと捉えられるかどうか。恵まれている自分に気付き、その状況に感謝できるかにかかっています。幸せの「気付き」を養っていきましょう。

言葉かけの例

「〇〇は心の優しい、思いやりのあるいい子だよ」

「〇〇ちゃんがそうされたらどう思う? 〇〇ちゃんがイヤなことはお友だちにもしないようにしようね」

「〇〇は誰よりも大切なの」

「You are precious」

「I love you, 〇〇」

3. 自分らしく生きる、自分を大切にするための言葉かけ

人生に満足していない人の多くは、本当にやりたかったことを実行に移さなかった人です。子どもたちには、そのような後悔をしないよう、自分らしく生きることを伝えたいものです。

自分らしく生きるには、まず自分自身を知ること。子どもが何をしている時に夢中になるか、何をしている時に喜びを感じるかを一緒に見つけましょう。そして、その子にしかない才能をサポートし、励まし、伸ばしてあげてください。自分の才能を社会に生かすことができれば、その子の人生は豊かになります。

どの親も子どもに夢を託します。けれども、子どもは自分自身で自分の人生を歩まなければなりません。親の役割とは、正しい生き方の見本を示し、言葉かけで補うことです。ポジティブな言葉かけで、子どもの未来を見守っていきたいですね。

言葉かけの例

「自分の心に正直に生きようね」

「本当はどう思っているの?」

「いやなら、はっきりNo と言っていいよ」

「人の言うことを気にしちゃダメ。言いたい人には言わせておけばいいから」

「人生は一度だけ。〇〇が本当にやりたいことをしていいんだよ」

「親や周りの人のためでなく、自分のために生きようね。そうしないと、いつか後悔するよ」

「人のことをうらやましく思うことはやめよう。みんなそれぞれの人生、それぞれの幸せがあるからね」

「からだは大切に。からだが資本だからね。それは心の健康もだよ」