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平成とはどんな時代だったのか

┃平成とはどんな時代だったのか

『10代に語る平成史』
後藤謙次(岩波ジュニア新書)

ある年齢以上の人々にとって「平成」は、当時官房長官だった故小渕恵三氏が掲げた「平成」という書の映像から始まっているのではないだろうか。『10代に語る平成史』(後藤謙次著、岩波ジュニア新書)の著者は、元時事通信社の記者。昭和が終わり平成が始まったその日、小渕氏の元号発表にも立ち会っていた。激動の30年間を振り返り、何があったのか、社会はどう変わったかを、新しい時代を支える若い人たちにわかるように解説している。

天皇陛下は即位後、全都道府県を2巡している。皇太子時代にも1巡しているので、3巡していることになるのだという。もちろん、諸外国への訪問も相当多い。『象徴天皇の旅/平成に築かれた国民との絆』(井上 亮著、平凡社新書)の著者は、「これほど国内外を旅してまわった日本人はほかにはまずいないのではないか」としている。

著者は、日本経済新聞で長く宮内庁を担当した記者で、天皇、皇后両陛下の国内外の旅に同行した経験を持つ。両陛下の旅を報道する際には、おふたりの動向が中心になるが、本書では、全国各地、迎える地域の人々の様子、警備の実情など、周辺の「風景」をも伝えようとしている。皇室報道に携わる者の役割として、天皇・皇后のお人柄が伝わる心温まるエピソードを紹介しつつも、天皇の政治利用が行われていないか、皇室外交が「外交カード」のように使われることがないかをチェックする重要性を著者は強く意識してきた。若い世代の記者たちの間には、権力を監視する意識が希薄になりつつあるのではないか、という懸念を表明している。

『上皇の日本史』(本郷和人著、中公新書ラクレ)は、200年ぶりの天皇譲位となる生前退位を目前に注目を集める、「上皇」という日本独自の地位について、歴史上どのような例があったのかを歴史研究者が解説。外国では、退位した王や皇帝に特別な呼称は用いない。「上皇」とはどんな存在だったのか。古代から近代天皇制まで、天皇と政治の関わりの歴史を振り返る。

┃本当の「働き方改革」に必要な意識改革

『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』
利益生むホントの働き方改革
各務晶久(朝日新書)

「働き方改革」が叫ばれているが、その言葉ばかりがひとり歩きしているのではないか、と指摘するのが『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下/利益生むホントの働き方改革』(各務晶久著、朝日新書)。政府は、長時間労働の防止や賃金引き上げ、労働生産性向上などを掲げるが、本書では日常業務ですぐ取り組めるような「労働生産性向上」に的を絞っている。

具体的な例も紹介されている。たとえば、ある企業では、ソフトウェアと定点カメラを用いて徹底的に業務の分析を行い、管理職、一般社員それぞれにどの業務・作業に時間を取られているかを検証している。管理職は部下からの報告メールには原則として返信しない、社内メールは「お疲れさまです」などの挨拶を禁止して用件のみを伝える、などのルールを策定し徹底させただけで、大幅に労働時間を削減できたという。

本書での成功例は、ITシステムによる業務効率化ではなく、一見小さなことも多い。AIなどに頼らずとも、仕事のやり方を抜本的に見直し、意識を変えるだけで生産性を上げる余地がまだまだある、と指摘する。業務改善で得た利益を提案者に還元するなど、コスト改善のインセンティブを高めるアイデアも紹介している。

『英語教育幻想』
久保田竜子(ちくま新書)

『英語教育幻想』(久保田竜子著、ちくま新書)の著者は、米国やカナダの大学で教鞭を執ってきた言語教育学者。日本から派遣された英語教員の研修にも携わる。グローバル化が進み、英語教育の重要性が叫ばれている日本では30年ほど大学・学校での英語教育を「強化」しようという動きが続く。「英語学習はできるだけ早くから」「ネイティブ・スピーカーから学ぶのがいちばん」「英語は英語で学ぶべき」など、英語教育における一般的な思い込み、つまり「幻想」の数々が、かえって日本人の英語をダメにしているのではないか、と検証している。2020年の大学入試改革を前に盛り上がる、
官民挙げての英語ブームに振り回されないためにも冷静な議論をと訴える。

※2018年8月刊行から(次号へつづく)

連想出版編集部が出版する ウェブマガジン「風」編集スタッフ。新書をテーマで連想検索する「新書マップ」に2004年の立ち上げ時から参加。 毎月刊行される教養系新書数十冊をチェックしている。 ウェブマガジン「風」では新書に関するコラムを執筆中。