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新たなステージに立つ宇宙開発

┃ 新たなステージに立つ宇宙開発

『宇宙はどこまで行けるか』
ロケットエンジンの実力と未来
小泉宏之(中公新書)

宇宙開発競争が今、大きな変革期を迎えている。これまでの宇宙開発は、国の威信をかけ、政府系宇宙機関と大企業が中心となって進められるものだった。近年、多数の大学やベンチャー企業などが参入し、新たなビジネスの場として注目を集めるようになった。『宇宙はどこまで行けるか/ロケットエンジンの実力と未来』(小泉宏之著、中公新書)では、「はやぶさ」プロジェクトに携わった著者が、宇宙開発の最前線を紹介する。

注目を集めているのは、米国の民間ロケット打ち上げ企業、「スペースX」社である。IT企業の創始者が立ち上げたこの会社が重要視するのは「コスパの高さ」。打ち上げ数を増やし、打ち上げロケット一部の再利用に取り組むなど、これまでの宇宙開発の常識を打ち破り、低コスト化を目指している。

大学入試センター試験、いわゆる「センター試験」は、2020年1月の実施を最後に廃止される。このあと新たに導入される「大学入学共通テスト」では、試験の内容が大幅に変更されることが決まっている。

『国語教育の危機/大学入学共通テストと新学習指導要領』(紅野謙介著、ちくま新書)は、すでに全国の高校生を対象に試行された「プレテスト」と「新学習指導要領」を詳細に分析し、慌ただしく、強引に進められようとしている改革の問題点を洗い出す。

2018年、小学校で道徳が正式な教科となった。2019年には中学校でも教科として道徳が教えられることとなる。正式な教科名は、「道徳科」ではなく、「特別の教科 道徳」というものである。

『誰が「道徳」を殺すのか/徹底検証「特別の教科 道徳」』(森口 朗著、潮新書)は、教育評論家である著者が、戦後70年、道徳教育が教科として正式に認められるまでの経緯を解説する。道徳は何を教え、何を教えないのか。宗教教育と道徳教育はどう違うのか。教育勅語の内容とも比較
し、さまざまな課題を明らかにしている。

2020年からは、小学校で英語が教科として正式に教えられる。『子どもの英語にどう向き合うか』(鳥飼玖美子著、NHK出版新書)は、英語教育の専門家の著者から、子どもたちの保護者に向けて書かれたもの。現在の英語教育はすでに親世代の頃と様変わりしており、大人たちが自分が受けた英語教育を思い出して判断すると、子どもを誤った方向に導きかねない、と指摘する。これからの時代、子どもたちに必要な英語力は何か、冷静に考えてみてはどうかと提案している。

┃ 日本と世界で激動の年、1968年に何があったのか

『世界史のなかの文化大革命』
馬場公彦(平凡社新書)

『世界史のなかの文化大革命』(馬場公彦著、平凡社新書)は、その発動から50年経った現在も、本国では研究を公開することも、公の場で語ることも禁じられたままにある「文化革命」を振り返る。ただし本書は、文革について、「中国現代史におけるある特殊な10年間の災厄」という従来の受け止め方とは違う視点を持つ。50年前の1968年、世界同時多発的に若者たちの反乱が起こったのはなぜか。文革の発端として、1965年にインドネシアで起きた「9.30クーデター」(1965年10月1日未明)から描くという、これまでにない試み。

1968年は激動の年で、世界の若者が旧世代と闘った。その年、日本では何が起きていたのかを独自の視点で切り取っているのが『1968年』(中川右介著、朝日新書)。今から50年前に大衆が夢中になった音楽、漫画、映画それぞれの動向に着目している。

『薬物依存症』
シリーズ ケアを考える
ちくま新書)

『薬物依存症/シリーズ ケアを考える』(松本俊彦著、ちくま新書)の著者は、薬物依存症治療の専門家。薬物依存症というと、薬物に縁がない大多数の人は、覚せい剤や大麻、危険ドラッグなど「違法薬物」を思い浮かべることがほとんどだろう。だが、昨今の日本で覚せい剤に次いで問題となっているのが、うつ病患者などに処方される「睡眠薬、抗不安薬」や「市販の感冒薬や鎮咳薬、鎮痛薬」といった、「違法ではない」薬物の乱用や大量服薬にあるということは、もっと知られるべきだろう。

※2018年9月刊行から

 

連想出版編集部が出版する ウェブマガジン「風」編集スタッフ。新書をテーマで連想検索する「新書マップ」に2004年の立ち上げ時から参加。 毎月刊行される教養系新書数十冊をチェックしている。 ウェブマガジン「風」では新書に関するコラムを執筆中。