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第34回 能登半島地震の報道〜技あり!機械翻訳達人への道

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

 

第34回 能登半島地震の報道


【今回の例文】

Tomita rescued two of her four cats after the quake, but the local evacuation centre in Suzu refused to let her stay with her pets, forcing her to sleep sitting up in a car for a month.
She moved into a pet-friendly evacuation centre that opened on Sunday and slept lying down for the first time in weeks that evening.
“If I hadn’t made it to this centre, I feel I might have buckled” under the mental strain, Tomita said.
Eventually, she wants to move out of the evacuation centre for the freedom of her cats, who now must remain caged or on a leash. But with no word on whether temporary housing will become available to her, she says she has no other option but to stay.

(出典:2月1日付 Reuters)

【機械翻訳】

震災後、富田さんは4匹の猫のうち2匹を保護しましたが、珠洲市の避難所ではペットとの同居を拒否され、1カ月間、車の中で座ったまま寝ることを余儀なくされました。
彼女は日曜日にオープンしたペット可の避難所に移り、その日の夜、数週間ぶりに横になって眠りました。
「もしこの避難所にたどり着けなかったら、精神的な負担で腰が引けていたかもしれません」と富田さん。
いずれは避難所を出て、ケージに入れたり鎖につないだりしなければならない猫たちの自由を取り戻したいと考えています。しかし、仮設住宅が空くかどうかもわからないため、ここに残るしかないと富田さん。

(DeepL 翻訳)

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【修正後】

地震後、富田さんは飼い猫4匹のうち2匹を見つけましたが、珠洲市の避難所ではペットの同行避難を拒否され、1カ月もの間、車内泊を余儀なくされました。
この日曜日にはペット可の避難所が開設され、そこに移動した富田さんは、その晩、数週間ぶりに体を横たえて眠ることができました。
「もしこの避難所にたどり着けなかったら、精神的なストレスで心が折れていたかもしれません」と富田さん。
現在、2匹の猫は、ケージに入れるかリードにつながなければならず、もっと自由にさせてあげたいと考える富田さんは、いずれは避難所を出るつもりです。しかし、仮設住宅が空くかどうかもわからないため、ここに残るしかないのが実情です。


元日に能登半島を襲った大地震は、世界各国で報道されました。今回は、その後の避難生活に関する記事を取り上げます。

今回のポイント✅

1. 内容に沿う単語をチョイス

機械翻訳では、避難所が「オープンした」と訳されていますが、楽しい施設かのようで不適切な印象を受けます。この場合は「開設された」のほうがふさわしいでしょう。

2. I might have buckledとは?

動詞のbuckleは、「シートベルトを締める」(buckle up)などのほかに、「屈服する、負ける」といった意味もあります。後ろにunder the mental strain(精神的なストレス)と続きますので、機械翻訳の「腰が引けていた」から修正訳では「心が折れる」としました。

3. 語順に気を付けて

関係代名詞で文章がつながっていても、無理にまとめず、わかりやすく切って構いません。機械翻訳の「ケージに入れたり鎖につないだりしなければならない猫たちの自由」では、かなり無理がありますね。

まとめ

近年、災害時のペットの扱いが問題となっています。社会全体で解決すべき課題のひとつと言えるかもしれません。

フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダにも居住経験があり、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。