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単文で力試し(1) 〜技あり! 機械翻訳達人への道

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

【今回の例文】

例文1: Comics that have been turned into movies or TV shows

例文2: The passengers can’t exit the bus at the intermediate stops.

例文3: This will permanently delete the file you started.

【機械翻訳】

例文1: 映画化・テレビ化されたコミック

例文2: 途中の停留所では乗客はバスを降りることができません。

例文3: これにより、開始したファイルが永久に削除されます。

(DeepL翻訳)

【修正後】

例文1: 映画やテレビ番組の原作となったコミック

例文2: 乗客はバスを途中下車できません。

例文3: これにより、作成中のファイルは完全に削除されます。


今回からは趣向を変えて、単文翻訳を見ていきます。例文は全て、実在するグローバルIT企業のマーケティング文書に出てきたものをアレンジしています。機械翻訳は、この類の翻訳が苦手。コンピューターでは意訳ができないからです。単純な構文なので、意味は正確に訳せますが、直訳調で極めて不自然な言い回しになります。生身の翻訳者の本領発揮となるのは、実はこういうシンプルな文章です。

今回のポイント

① 例文1:「原作」

機械翻訳の例は、正しく訳せていますが、「〜化」というところがなんとなく引っかかります。ここで「原作」という語が浮かべば、しめたものです。

② 例文2:「途中下車」

これも、機械翻訳の例で十分意味は伝わりますが、修正後の訳と比べてみてください。どちらがすっきりしているかは、一目瞭然ですね。ここでは「途中下車」という言葉が思い付くかどうかがポイントです。

③ 例文3:「作成中」

機械翻訳で「開始した」となっているのは、違和感のある表現です。「すでに作業を始めた」ということで、「作成中の」としました。

まとめ

このように、わずかながら、機械翻訳と人の手による翻訳の違いがわかるかと思います。普段から日本語の言い回しや言葉選びに注意を払い、こなれた表現がスッと出てくるように心がけてみてください。

フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダに居住し、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。