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「料理の鉄人」森本正治シェフ

世界で16店舗のレストランを運営する森本正治シェフ。そのひとつ、2016年にニューヨークでオープンした「モモサン・ラーメン」のシアトル出店が決まった。一体どんな店なのか? 9月7日にセーフコ・フィールドで行われた「マリナーズ・ジャパニーズ・ヘリテージ・ナイト」始球式に登板した森本シェフを直撃!

取材・文:上田あずさ

和の鉄人の店、モモサン・ラーメンがシアトルに進出

30歳で日本を飛び出し、ニューヨークで高級和食店「ノブ」総料理長として成功した森本シェフ。日本の人気テレビ番組「料理の鉄人」の3代目和の鉄人として記憶している読者もいるかもしれない。その後、アメリカ版「アイアン・シェフ・アメリカ」にも出演している。そんな森本シェフがプロデュースするラーメン屋の3店舗目が、ニューヨーク、ワイキキに続き、2019年春、シアトルにオープンすることが決まり、大きな話題になっている。場所は、インターナショナル・ディストリクト駅前に宇和島屋が2016年に建設した複合商業ビル、パブリックス1階。どうして、シアトルのこのロケーションが選ばれたのか?

「シアトルは大好きな街。おいしいシーフード、フレンドリーな人たち、そして何と言っても、日系コミュニティーの大きさが魅力的でした」。森本シェフはもともと野球少年で、高校まで野球をしていたこともあり、ジャパニーズ・ヘリテージ・ナイトの始球式は今回が初めてではない。2001年から4回行っており、そのたびに日系コミュニティーとの交流があったという。「たくさんの素敵な方々とご縁があり、シアトルでの店のオープンに至りました。インターナショナル・ディストリクトは、日系コミュニティーとのつながりが深く、現在は再開発が進む場所。この出店により、ますます活気を出せればいいなと思っています」

広島の名門崇徳高校野球部主将を務めた実力を持つ森本シェフ始球式でのピッチングには大きな歓声が上がった

森本シェフは新しく店をオープンする際、先入観を持たないように、あまり下調べはしない。現地を視察した時のフィーリングを大切にしているのだ。また、各店のシェフについて、日本料理経験者を重要視していないとも話す。「日本料理はこちらで教えられますから。それよりも、フランス料理でもイタリア料理でも何でもいいから、その料理についての基礎がちゃんとしていることが大切。あとは頭が良くて真面目で元気な人がいちばんですね」。森本シェフが指揮者の役目を担い、シェフと話し合って料理やコンセプトを決めていく。そのため、各店でメニューもデザインも全く違うものになる。世界中で森本シェフの料理が愛されるのは、そうしたローカルを大事にする姿勢によるところが大きい。

シアトルにやって来るモモサン・ラーメンもまた、日本のラーメン屋とは違う、ローカルに根差したレストランだ。「ラーメン屋とはいえ、現地客に受け入れられるために、マネジャーを置いて、スタッフ・ユニフォームもそろえたアメリカ的なレストランです。そこで、おいしいラーメンを食べてもらう。ラーメンに対して未だに間違った認識を持つ人がたくさんいるので、おいしいラーメンを全米に広めていきたい。期待していてください」

高級レストラン「モリモト」ブランドとは別展開されているモモサンは、ラーメンと小皿料理をリーズナブルな価格で提供するカジュアルなレストラン。同店の看板メニューである「モモサン・トンコツ」は、豚骨と鶏骨を7:3の割合で使用し、約12時間煮込んだスープが自慢で、なめらかな味わい。ココナッツミルク、カレー・ペースト、ゴマ・ペーストなど、マレーシアと日本の要素を絶妙に取り入れた担々麺「タンタン」も大人気だ。日本酒も種類豊富に取りそろえており、森本シェフ自らラベルをデザインした「イージーカップ」というカップ酒もある。

「日本人は一緒に働いていて気持ちいい。真面目で時間を守るし、協調性があって一生懸命ですよね。日本人はもっと誇りを持っていい」と、森本シェフからソイソース読者にエールをもらった。シアトル店のメニュー内容が決まるのはこれから。どんな料理が食べられるのか、今から楽しみだ。

森本正治■ 1955年広島県生まれ。高校卒業後、寿司職人として修業を始め、1985年にアメリカに渡る。ニューヨークで「ノブ」の総料理長を務めると、その味が評判となり、フジテレビの料理対決番組「料理の鉄人」に鉄人として出演。2001年、フィラデルフィアに「モリモト」1号店をオープンする。現在はドバイ、インド、ドーハ、メキシコなどを含む世界16店舗のレストランを運営するほか、料理本出版や酒、ナイフのプロデュースなど活躍は多岐にわたる。