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シアトルが生んだ新進気鋭のアーティスト UMI (うみ)さん〜スペシャルインタビュー

R&BやローファイをベースにしたUMIさんの音楽は、「ヒーリング・ネオソウル」という新しいジャンルを提唱しています。ゆったりとしたメロディーと心地よい歌声は、ほっと安らぐ温かさで聴く人の心を癒してくれるよう。その才能は着実に世界へと広がりを見せ、2023年にはアメリカを代表する野外フェス、コーチェラ・フェスティバルに出演。さらに、大人気アイドルグループBTSのテヒョン(Vブイ)とのコラボレーション楽曲を発表するなど、今、世界中から注目を集めている若手アーティストです。

取材・文:加藤良子 写真:本人提供

© Jospeh Collier
UMIシアトル出身のシンガーソングライター。アフリカ系アメリカ人の父と、日本人の母を持つ。4歳から作詞作曲を始め、シアトル郊外のタホマ高校に在学中にYouTubeやSoundCloudに楽曲の投稿を開始。2017年にシングル『Friendzone』でデビュー。2018年リリースの『Remember Me』はSpotifyで1億6,000万回以上再生される大ヒットとなった。LGBTQ+コミュニティーからも支持を集め、癒やしをテーマにした作品が数多く発表されている。8月22日には、ニューアルバム「People Stories」を発売予定。
@whoisumi
▪️生まれ育ったシアトルで、特に思い出に残っている場所はありますか。
幼児期はビーコン・ヒルのジェファーソン・パーク、その後はレドモンドのティーンセンター(旧消防署)で開かれていたオープンマイクのステージに何度も立ち歌っていました。メープルバレーに引っ越してからはレイク・ウィルダネス・パークがお気に入りでした。
▪️シアトルは独自の音楽文化を持つ街でもありますが、ご自身の音楽活動において、街や地域の文化が影響を与えた部分はありますか?
雨が多いシアトルでは自然と室内で過ごす時間が長くなり、物思いにふけったり、ノスタルジックな気持ちになることがよくありました。雨には、心の内にある感情を見つめさせてくれる力があると感じています。私の音楽は内省的でノスタルジックな響きを持ち、不完全でありながら質感豊かな自然の世界と通じるものがあります。そうした感性を育んでくれたのは、シアトルの雨と豊かな自然だと思います。
▪️SNSに自身の動画を地道に投稿を続ける中で、少しずつ手応えを感じるようになったきっかけがあれば教えてください。
人前で歌うのが怖くて、高校生の時にSoundCloudとYou Tubeに動画を投稿し始めたのですが、毎週アップロードするうちに次第に反響を得るようになりました。ビヨンセの「7/11」をアコースティックでカバー(笑)。そのユニークさが評価されフォロワーが増えたことで、自分らしくあることが誰かの心に届くのだと実感できました。
▪️テヒョンさんとのコラボレーションは、どのようなきっかけで実現したのでしょうか?
Vさんが私の曲「Midnight Blues」をインスタグラムのストーリーで共有してくれたんです。「彼にコラボを提案してみたら」と母に言われて……正直、クレイジーだと思ったけど、とりあえず聞いてみたら、なんとOKの返事が! いくつか楽曲を送った中で、彼が選んだのが「wherever u r」で、彼が兵役に入隊する直前に無事レコーディングを終えることができました。特に思い出に残っているのは、ボーカルのアイデアを日本語、英語、韓国語の3言語でやり取りをしたこと。いろんな言語を使って音楽でつながれた時間がとても楽しく、新鮮な体験でした。
▪️2023年のコーチェラ出演は、どのような経緯で決まったのでしょうか?
コーチェラは、私のビジョンボードに5年間ずっと載せていた憧れの舞台でした。ヨーロッパツアー中に出演が決まったときは、本当に嬉しかったです。そこからは、肺活量や持久力のトレーニングに加え、ステージで流す映像制作のほか、ハープやアフリカのドラムなどを取り入れた新しいセットも組むなど大変でした。フェス当日、舞台裏は大混乱。ステージの設営からサウンドチェックまで、全てを15分以内でこなさなければならなかったんです。無茶だと感じつつ「この経験を乗り越えられたら、もうできないことなんてない」と思ったのを覚えています。
▪️「ソイソース」の読者には、ミックスルーツを持つ人がたくさんいます。かつてアイデンティティーに悩んでいたというUMIさんが今、過去の自分へメッセージを送るとしたら、どんなことを伝えたいですか。
無理に周囲に溶け込まなくても良いのです。誰もが少しずつ個性的なのに、そうでないふりをしているだけ。自分が何者なのか分からなくても、ロールモデルが見つからなくても大丈夫。大事なのは誰かのようになることではなく、説明のつかない自分自身になることです。全てがきっちり説明がついて理解される必要なんてないんです。
▪️忙しい毎日を送る人の中には、つい心のケアを後回しにしてしまう人もいるかと思います。そういった人に伝えたいことがあればお願いします。
心のケアを後回しにするのは、腰痛があるのにストレッチをしないようなものです。心を整えることは特別なことではありません。心は生きていく上で欠かせない土台だから。もし心を置き去りにしていたら、本来送れていたはずの暮らしを楽しめず、自分らしくいられていないかもしれません。
穏やかで幸せな世界にするには、一人一人が心を大切にすることから始まります。本当の幸せは、澄んだ心から生まれるのだと思います。
▪️UMIさんのようにアーティストを目指す人に向けて、何かメッセージがあればお願いします。
完璧を目指さなくても大丈夫。まずは作品を作って共有してみてください。私自身、どこへ向かっているのか分からないまま進んでいることがあります。でも、前進あるのみです。
あなたを見つけてくれる人はいるはずです。大切なのはまず自分自身をしっかり見つめること。真のアーティストはトレンドを追うのではなく、自分の内側から作品を生み出します。そこから、自分のスタイル、つまり「新たな波」を作り出す力を持っていきます。だから、SNSや周囲の雑音から少し離れて、自分の声に耳を澄ませてみてください。それが難しいと感じるなら、まずは瞑想を始めてみるのも一つの方法です。アーティストとして進んでいくには、そうした静けさと向き合う力が必要だと思います。