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米国発、異世界転生の物語を紡ぐ Web 小説家 ブランドン・リーさん〜スペシャルインタビュー

近年、小説投稿サイト発の「転生系」*アニメがヒットする傾向が続いています。そんな中、アメリカ発のウェブ小説を原作に日本でテレビ放映されたアニメ『最強の王様、二度目の人生は何をする?(英題: The Beginning After the End)』(以下『TBATE』)が注目を集めています。本作は、ウェブコミック&ライトノベル投稿サイト「Tapas」で1億5,000万回以上の閲覧数を記録するほどの人気を誇り、2026年にはシーズン2の配信も予定されています。今回は原作者でシアトル在住のブランドン・リーさんに話を伺いました。
*主人公が一度死を迎え、別の世界や時代に生まれ変わるとういう設定

取材・文:加藤良子 写真:Crunchyroll

ブランドン・リー(ペンネーム:TurtleMe)■韓国生まれ、アメリカ・ロサンゼルス育ち。カリフォルニア大学バークレー校で心理学を学び、金融業界で働いたのち、趣味で始めた小説執筆をきっかけに作家へと転身。
@turtleme93
▪️アメリカ発のウェブ小説が日本でアニメ化されたことについて、原作者としての気持ちを聞かせてください。

英語のウェブ小説・ウェブコミックシリーズが日本でアニメ化されるのは、もしかとするとこの作品が初めてかもしれません。たとえそうでなかったとしても、非常に誇らしくに思っています。同時に、その先駆けとしての責任の重さも感じています。一連の出来事はまるで夢のようであり、アニメ制作の世界について多くの学びがありました。自分の物語が国境を越えより多くの人々に届き、共感してもらえたことはこの上ない喜びです。

▪️日本のアニメ制作会社との作品作りはいかがでしたか?

アニメ制作会社と仕事をするのは今回が初めてだったため、他社との比較はできませんが、一般的に脚本や演出などの最終的な判断は制作会社が下すことが多い中で、本作を手がけたスタジオ・エーキャット(Studio A-CAT)は、脚本に対する私の意見にとても柔軟に対応してくれました。言葉の壁はありましたが、Crunchyroll(クランチロール)がプロデューサーとしてだけでなく、仲介役としても支えてくれたことに感謝しています。アニメは原作とは異なる表現媒体ですが、その違いを理解し尊重しています。

©TBATE Anime Production Committee
▪️日本の創作物に見られる「中世ヨーロッパ」の世界観に違和感はありますか? また、自身のファンタジー作品を創る上で意識した点を教えてください。

アニメや漫画では、ヨーロッパ風のファンタジー設定に独自の文化的要素を加えることがよくありますが、私はそれを異なる文化を融合させる手法の一つと捉えています。韓国からアメリカに移住した経験から、私は東洋と西洋の要素を自然なかたちで組み合わせるよう心がけてきました。たとえば、『TBATE』では、西洋ファンタジーに登場する代表的な種族であるドワーフやエルフ、ドラゴンといった要素に加え、エルフの衣装や修練、転生といった東洋的な概念も盛り込んでいます。私が最も大切にしているのは、読者が共感しやすい世界観を創ることです。そのために、さまざまな文化的要素を生かしながらも、物語全体の整合性や説得力が損なわれないよう意識しています。

▪️ウェブ小説をアニメ化するにあたり、最も大変だったことは何ですか?

アニメ制作の性質上、各シーズンは独立した物語として完結する必要があるため、長編のストーリーを1シーズンに凝縮しなければならないという課題がありました。原作を読んでいない視聴者にも納得感のある最終話を届けつつ、次の展開に期待を持たせる構成にすることは、とても重要なポイントでした。

▪️孤独な前世を生きた最強の王グレイが、なぜ少年アーサーとして生まれ変わって素直に生きられたのか。その心理について詳しく教えてください。

2度目の人生で愛や友情を知ったグレイ(アーサー)にとって、それは癒しの経験でもありました。圧倒的な力を持つ王でありながら、孤独の中で生きてきた彼にとってこの人生は初めて人とのつながりを得られる機会だったのです。過去への後悔を胸に、彼はこの新たな人生を「愛を学ぶ時間」として大切にしています。愛する人々やその生き方を守るため、彼はさらに強くなろうと努力する一方で、力が増すほどに、失うかもしれないものの重みも増していきます。この葛藤こそが、愛する人々のためにより良い人間でありたいと願う気持ちと、彼らを失いたくないという思いの両方を生み出し、彼を突き動かす大きな原動力となっているのです。

▪️本作は、アメリカ発・英語オリジナル・日本制作という独自の制作体制によって、アジアと西洋を結ぶ新たなアニメーションの可能性を示しました。このような制作スタイルは、今後のウェブ小説、アニメ、漫画業界にどのような影響を与えると予想されますか?

東洋と西洋、両方の物語文化の中で育った私は、物語には国や文化の違いを越えて共感できる普遍的なテーマがあると感じています。これからのウェブ小説やアニメ、漫画業界は、さらにグローバル化が進み、多様な背景を持つクリエイターたちが活躍する場が広がっていくでしょう。私の作品がその流れの一助となれているなら、これほど嬉しいことはありません。

たとえば、韓国文化をベースにしながらも、世界中の観客を魅了したソニー制作の『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』のような作品は、こうした変化の現れといえるでしょう。今後も、国境や文化を越えたコラボレーションはますます増えていくはずです。