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頭をスッキリさせて「今」にフォーカス! マインドフルネスの正しい実践法〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

頭をスッキリさせて「今」にフォーカス!
マインドフルネスの正しい実践法

明けましておめでとうございます。新年の抱負はお決まりですか? この機会に、あなたの人生を大きく変えるかもしれない「マインドフルネス瞑想」を試してみましょう。

マインドフルネスとは、「今ここ」にいる状態に注意を向けること。不安感などのネガティブ感情を落ち着かせるのに効果的な方法として広く普及しています。「試したが長続きしなかった」、「忙しくて時間がない」、「効果が感じられなかった」といった声も聞くので、今回は1、2分で実践できる、簡単かつ効果的な方法をご紹介します。

まずは、始める前にストレス度合いをチェック。ストレスが最大の状態を10、完全にリラックスしている状態を0とすると、あなたは今どのくらいですか? 数値を記録したら、マインドフルネス瞑想に入ります。やり方は、深呼吸をゆっくり10回するだけ。その時に、体内に入ってくる空気の動き、肺やお腹の感覚をただ感じます。

私たちは1日に2万回以上も呼吸をし、毎分6リットルの空気を肺に取り込み、30兆個の細胞に新鮮な酸素を送っています。日頃はあまり意識を向けない自分の体に感謝しながら、深呼吸をしましょう。息を吸う時には新鮮な酸素を取り込み、息を吐く時には老廃物を外に出すイメージで行います。それではどうぞ。

深呼吸が終わったら、今の体の感覚と気分をゆっくりと味わってみてください。「気分が良くなった」、「意外と長く感じた」、「次のことを考えていた」など、反応はさまざまだと思います。最後にストレス度合いを再度チェックしてみましょう。始める前と比べて、数値に変化はありましたか?

少しでも気分が落ち着いた人は大成功です。この気分の落ち着きこそ、私たちのあるがまま、マインドフルネスの状態です。否定も肯定もなくただ存在して、今ここにいる自分を感じること、それが本来の自分とつながっている状態、つまりマインドフルネスなのです。その逆に、恐れや不安にとらわれて本来の自分とのつながりが外れてしまうと、好きなことをしているはずなのに集中できず、心の底から楽しめません。

「あなたは今、100%安全ですか?」という質問に対して、今ここに沿った思考と感情をしている人は「はい」とすぐに答えられます。しかし、過去の出来事や未来のリスクを思い浮かべる人ほど、とっさに「はい」とは答えられません。自分の脳を机にたとえるなら、今ここと関係ない思考でいっぱいの状態は、ごちゃごちゃ物が散乱している机。今ここにつながったマインドフルネスの状態は、きれいに片付いてスペースがたくさんある机です。

「今ここだけに集中して生きると、計画性のない刹那的な人生になるのではないか」という誤解もあります。実はその逆で、マインドフルネス瞑想は人生の目標を見つけるのにも役に立ちます。

私たちは不安の中にいると、比較・競争・分断の思考が優勢になり、他人の目が気になったり影響を受けたりしてしまいがち。その逆に、落ち着いている状態では俯瞰・協力・調和の思考が優勢になり、他人がどう思うかよりも自分の本当にやりたいことや自分のできることに注意が向くのです。

不安や焦りが出るたびにマインドフルネス瞑想を実践していると、未来も過去も頭の中にしか存在せず、私たちはこの一瞬にしか生きていないということに気付きます。この瞬間をどう感じて、どう行動するかの積み重ねが人生なのだと実感すると、人生の目標ですら真の生きる目的ではなく、この一瞬を充実させるための手段だとわかるでしょう。ゲームで次々とチャレンジをこなしてステージをクリアする時、そのチャレンジ自体が楽しいですよね。人生もそれと同様、山あり谷ありの試練の中で移り変わる感情を味わい、チャレンジ自体を楽しむのが生きる目的と言えるかもしれません。

こうした心持ちで生きると、プロセスにフォーカスするので結果に執着しなくなり、失敗への恐れが減ります。それだけでも十分なメリットですが、さらに今ここに集中できるので新しいアイデアがひらめきやすく、失敗への恐れが低い分、積極的な行動につながり、願望が実現する可能性も高まります。

今ここを我慢して結果を重視する生き方から、今ここのチャレンジを味わう生き方へ。もし大勢が今を味わう生き方へ変われば、比較・競争の世界から、協力・調和の世界に近づくことができるかもしれませんね。

 

ワシントン州認定メンタルヘルス・カウンセラー(認定ID:LH60996161)。ニューヨークと東京をベースに、ジャーナリストとして多数の記事を寄稿。東日本大震災をきっかけに2011年にシアトルへ移住し、災害や事故などでトラウマを抱える人々をサポートするためノースウエスト大学院で臨床心理学を専攻。米大手セラピー・エージェンシーで5年間働いた後に独立。現在、マイクロソフト本社の常駐セラピストを務める。hiroko@lifefulcounseling.com