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国際結婚を考える会

ドイツグループ・オフ会 左端が同会国会請願担当・ドイツグループ所属トルン紀美子さん
ドイツグループオフ会 左端が同会国会請願担当ドイツグループ所属トルン紀美子さん

「国際結婚を考える会(Association for Multi-Cultural Families、以下、AMF)」とは、複数の国、文化、言語、習慣をもつ「国際家族」が平和で安定した生活を送れるように、問題を提示し、意見を交わし、そして解決を図ることを目的としたグループ。現在の主な活動のひとつが日本における重国籍の容認請願署名活動で、海外に永住する日本人にとっては身に積まされる問題だ。 国籍法改正の必要性を訴える 日本の国籍法には国籍選択制度が制定されており、出生によって外国籍を取得し、日本国籍との重国籍になった場合、所定の期限までにどちらかの国籍を選択する義務がある。例えば、国際結婚で生まれた重国籍の子どもは22歳までに日本国籍か外国籍かのどちらか一方を選択しなければならない。「でも、日本国籍を選択した後の外国籍離脱は努力義務であり罰則は存在しません。事実上、重国籍保持が合法的に可能で、すでに60万人以上の日本人が外国籍を併せ持っていると推定されています」とAMF・国会請願担当・ドイツグループ所属のトルン紀美子さんは言い、こう続ける。「法律に国籍選択制度という条文がある限り、日本の世論から『国籍を2つ以上持っているのは法律違反だ』という誤解を払拭することができません」。また、成人の重国籍に関しては「外国籍を取得=日本国籍の自動喪失」とみなされるため、外国に定住する日本人が苦渋の選択に直面することも少なくないそうだ。 トルンさんは、「AMF は10 年以上にわたって、毎年2回請願署名を集め、国会開会のたびに請願書を提出しています。1985 年の国籍法改正から30年が経つ今、今一度、時代にあったものに改正するべき時期は十分に熟していると確信しています」と現状にかなった法改正の日を待ち望んでいる。

オランダのグループ、かもめの会30周年
オランダのグループかもめの会30周年

会員は世界各国に AMFの会員は国際結婚をした日本人女性が大半を占めるが、国際結婚に関心がある人、研究職についている人、日本国内で外国人支援のボランティア活動をしている人なども入会している。「最近では、国際結婚家庭で生まれた子ども世代が結婚する年代になり、若い会員も増えています」とトルンさん。 日本国内では、個人会員が東日本と西日本に分かれ、それぞれに定例会を開いている。海外では、個人会員に加えて、ドイツ、オランダ、スイス、アメリカ2グループの合わせて5グループが活動している。オランダの「かもめの会」や台湾の「居留問題を考える会」とはグループを超えた交流を深めて、国籍法やハーグ条約についての勉強会などを開いている。また、2 カ月ごとに発行する会報「国際結婚を考える会・ニュース」は、各地域の活動報告や国内外会員の意見や情報交換の場となっている。

東日本定例会参加の皆さん
東日本定例会参加の皆さん

会員数は、一時期400人以上、世界70カ国を超えていたが、現在は30カ国で約170人に減少。インターネットが普及し、より簡単に必要な情報を手に入れやすくなったことで、全盛期よりも会員数が減ったというが、トルンさんは「インターネット上で見つかる情報がすべて正しいとは言い切れません。AMFが長い時間をかけて収集した正しい情報量にはとても比べられないと思います」と同会の情報の信頼性に重きを置く。 個人会員が4人集まれば支部を立ち上げることができ、アメリカでは、2グループが活動をしている。トルンさんは「支部を作ることで、会員間の交流も深まります。地理的に定期的な集会が無理な場合でも、メーリングリストを活用した情報交換など活発な活動が可能になります」。 同会では随時「国籍選択制度の廃止を求める請願」と「元々日本国籍を持っている人が日本国籍を自動喪失しないよう求める請願」の請願署名運動を行っており、オンラインで過去に法務大臣に提出した要望書、国籍法の関連資料、署名用紙などを手に入れることができる。トルンさんは、「多重国籍などに関する問題を抱えている人が、役所や関係機関の人たちの言葉を絶対正しいと信じ、取り返しのつかない手続きをしてしまうケースは少なくないと思います。だからこそ、私たちの会のような団体があるということを広く周知してもらう活動を続けていくことはとても重要だと思っています。シアトルには会がありませんので、新しい会が発足したら嬉しいですね」。 入会の手続きなどについては同会ホームページを参照。 国際結婚を考える会 (Association for Multi-Cultural Family) homepage3.nifty.com/amfe-community AMF の歴史 ・1979 年、外国籍の配偶者をもつ7 人の日本人女性が、同会の前身となる「国際結婚日本人会」を結成。 ・政治家・土井たか子氏の国籍法改正運動や沖縄の無国籍児の問題提議などの日本政府への精力的な働きかけを通して、国籍法に大いに注目が集まっていたことをうけて、国際結婚をしている人だけでなく、関心のある人なら誰でも参加できるようにと1980年に現在の名称に変更。 活動実績 ・国籍法改正に向けた署名活動、および陳情活動 ・出入国管理法改正と外国人登録法廃止の要望書の提出 ・外国人の住民としての権利の保障 ・ハーグ条約に関する要請書 取材・文:山﨑悠