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移民局がADITスタンプ送付サービスを開始〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。

移民局がADITスタンプ送付サービスを開始

移民局は3月中旬、「ADITスタンプ」(Alien Documentation Identification and Telecommunication)送付サービス開始を発表しました。ADITスタンプは、グリーンカードに代わって永住者の合法的なステータスを一時的に証明する書類で、「I-551スタンプ」とも呼ばれています。

永住者は、常にステータスを証明できるようにグリーンカードを携帯していなければなりません。しかし、グリーンカードを紛失してしまったり、盗難に遭ったりと、一時的にグリーンカードが手元にない場合も考えられます。グリーンカードの延長申請や帰化申請の期間中、申請受理書に記載されているグリーンカード延長期間が期限切れになってしまうことも。そうしたケースでは、一時的な永住者証明の手段が必要になります。

ADITスタンプがあれば、永住者が海外からアメリカに再入国する際、グリーンカードや申請受理書の代わりに提示することで再入国できます。また、ADITスタンプは就労許可の証明としても使えるため、雇用主に提示して、アメリカ国内の就労が可能だと証明することが可能です。

注意したいのは、ADITスタンプは一時的な措置だという点です。グリーンカードの紛失や盗難では、再発行手続きが必須であり、ADITスタンプをその代わりとすることはできません。

プロセスはその時々で変わります。以前は「Infopass」と呼ばれるオンライン予約システムを利用でき、予約日に地域移民局オフィスに出向き、パスポートにADITスタンプを押してもらっていました(緊急時は予約不要)。最近では、移民局のカスタマーサービスに電話をかけ、ADITスタンプを希望する理由を説明し、それが認められた場合のみ、地域移民局オフィスへの予約が許可されます。しかし、パンデミック以降の移民局のリソースなどの問題で、予約が許可されるのは本当の緊急時のみとなり、予約が困難な状況が続いていました。そのため、仕事や家族の事情で出国が必要なのに、グリーンカード延長を申請中だったり、申請受理書に記載されているグリーンカードの延長期間が期限切れになっていたりで出国できない方も少なくありませんでした。

移民局の新しい発表により、大半のケースでは、永住者が地域移民局オフィスに出向くことなく、ADITスタンプをUPSまたはFedExで受け取ることになります。ただし、発送が間に合わない緊急時や、移民局のシステムに使用可能な写真がない、身元や住所が確認できないといった場合、引き続き地域移民局オフィスへの予約が必要です。この新しい方法により、移民局は永住者の負担を軽減すると同時に、地域移民局オフィスのリソースを効率化できると期待しています。

ADITスタンプ申請のプロセス

1:永住者は移民局のカスタマーサービスに電話をして、ADITスタンプを希望する理由を説明。
※ここまでは発表前と変わりません。
2:移民局が永住者の身元や住所(UPSやFedExを受け取れるかどうかも)を確認。地域移民局オフィスにADITスタンプの発行をリクエストするか、あるいは対面での受け取りが必要になるかを判断。
3:地域移民局オフィスは、リクエストの内容を確認後、ADITスタンプ、DHSの印鑑、および移民局のシステム内に管理されている永住者の写真が印刷されたForm I-94を発行し、永住者に発送。ADITスタンプの有効期間は移民局が裁量権を持ち、特別な規制を除き上限は1年。

健康診断書の60日ルール
以前の記事で、グリーンカードのアジャストメント申請に必要となる、移民局指定の医師による健康診断の60日ルールの再開をお知らせしました。60日ルールとは、グリーンカード申請の際、健康診断書は医師が署名してから60日以内に提出しなければならない、というのものです。コロナ禍で、移民局はこの60日ルールを2023 年 3月31日まで免除しており、4月1日以降は復活させるとしていましたが、3月31日に移民局はこの60日ルール自体の撤回を発表しました。ただし、健康診断は医師が署名した日から2 年間のみ有効という要件は変わりません。そのため、アジャストメント申請を提出する直前に健康診断を受けることが、引き続き望まれます。