知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
移民局が申請料値上げを提案
2019年11月8日に、移民局は申請料の値上げを提案しました。移民局の運営予算の90%以上が申請料から出ているため、移民局は、定期的に申請料と支出をレビューし、必要に応じて運営費をカバーできるように申請料を調整することになっています。今回提案されているのは、平均21%の値上げで、2016年以来となります。移民局は、現状の申請料では、年間13億ドルが不足すると予測しています。今回提案されている値上げに関して、以下にいくつか例を挙げてご説明します。
● アメリカ国内でのアジャストメント申請(I-485)
現在、アメリカ国内でアジャストメント申請(I-485)をする場合の申請料は$1,225です。これには、基本申請料$1,140のほか、バイオメトリックス料$85が含まれます。また現在、アジャストメント申請には、アジャストメント申請期間中の就労許可証と渡航許可証の申請(それぞれの延長申請も含む)がパッケージとなっているため、これらの申請には別途申請料が発生することなく、$1,225に含まれています。
しかし、今回提案された値上げが施行される場合、就労許可証や渡航許可証の申請には、別途申請料がかかることになり、アジャストメント申請の際、これらの申請も希望する場合の申請料は合計$2,195となります。これは、現在の申請料の約2倍で、内訳は以下の通りです。
アジャストメント申請 $1,120
バイオメトリックス $0
就労許可申請 $490
渡航許可申請 $585
なお、アジャストメントの申請期間によっては、就労許可証や渡航許可証の延長が必要になる場合がありますが、その際は、別途申請料が発生します。
● 非移民ビザ申請
非移民ビザ申請の申請料に関して、H-1Bビザが現在の$460から$560、Lビザが$460から$815、Oビザが$460から$715の値上げが提案されました。H-2Bビザに関しては、現在の$460から、申請の受益者がわかっている場合は$725、わかっていない場合は$395と提案されています。ただし、これらは、基本申請料のみで、ビザの種類によっては、詐欺発見・防止目的、および米国労働者教育目的などで、別途料金がかかります。
● 帰化申請
帰化申請に関しては、現在の基本申請料$640(+バイオメトリックス料$85)から$1,170と約83%の値上げが提案されています。
繰り返しになりますが、これらは現時点ではあくまで移民局の新しい規定・規則の提案の公示という手続き段階であり、まだ実施されていません。これから一般から意見を求めたり、最終的な調整をしたりと通常のステップを踏んで、最終決定、発表、実施となります。なお、上記とは別に、すでに値上げが確定しているプレミアム・プロセスに関しては、以下の通りです。
2019年12月2日より、プレミアム・プロセスと呼ばれる優先審査の申請料が$1,410から$1,440に値上げされます。移民局は、申請を受理してから15暦日以内に、認可通知、追加書類要求通知、却下通知、 または不正行為の疑いがある申請に対して調査通知を発行すると保証しています。 ただし現在、移民局は「15暦日」を「15営業日」に変更することを検討しています。
また、H-1Bビザの申請では、会計年度2021年から雇用主による電子登録が開始されますが、移民局は、電子登録の開始と共に、$10の登録料を設定することを発表しました。
2020年は、大統領選挙の年となります。トランプ政権になって以降、移民法は大きく変化してきましたが、引き続きこの傾向は続くと予想されます。