日系IT企業、PSP INCでは東日本大震災直後に募金5,000ドルを集めたほか、被災地の子どもたちに提供したホームステイ・プログラムをきっかけに、2012年9月、非営利団体のPSP チルドレンズ・ファウンデーション(以下PSPCF)を設立。ワシントン大学院生を奨学金で支援するファンドレイズ・イベントとして、ゴルフ・トーナメントも開催する。
–東日本大震災直後の募金活動やホームステイ・プログラムについて聞かせてください。
募金集めは最初、3,000ドルを目標に募り、あとからPSP INCで金額をマッチングさせてもらい、日本赤十字社に寄付すると発表しました。しかし、受付開始の初日に3,000ドルの寄付が集まってしまい、あわてて目標金額を5,000ドルに引き上げた次第です。それでも3日で5,000ドルを超えていました。
募金活動後は、被災地にいる子どもを支援するために何かできないかと考え、2012年と2013年の夏季休暇中、親を亡くした宮城県気仙沼市の13〜15歳の子どもたち16名、先生方4名を10日間のシアトルでのホームステイに招待する、観光や勉強、企業訪問を含むプログラムを実施しました。子どもたちは、ベルビュー・チルドレンズ・アカデミー(以下BCA)協力の下、シアトルの現地校で体験入学もできました。これは、当時のPSP INC社長、中村真弓が気仙沼の教育委員会の方々と直接会い、実現しました。
デルタ航空、マイクロソフト、グーグル、YMCA、BCA、ピュージェット・サウンド・コーチ・ラインズ、シアトル・マリナーズからの協賛もありました。マイクロソフト社からは訪れた生徒にひとりずつXboxのゲームがプレゼントされたり、ピュージェット・サウンド・コーチ・ラインズからは無料バスの提供があったり、また、Facebookを通じて事情を知ったデルタ航空が飛行機代を安くしてくれるなど、多くの企業の協力を得て成功させることができました。
–当時のことをどう振り返りますか。
初めはPSPCFの基金が存在しなかったため、ホームステイ・プログラムに関わる費用の領収書を切ることができない苦労がありました。2012年9月のPSPCF設立時も、501(c)(3)の認可には審査が難しく、同プログラムに賛同する弁護士に相談できたことは幸いでした。
最初は表情の暗かった子どもたちが、帰り際にホストファミリーとの別れを惜しむ姿を見て、実施できて良かったと思いました。日本に帰国後もホストファミリーとずっとやり取りを続けていたとも聞きました。子どもたち、同行の先生方は今どうしているかと時々思い出します。10年は早いですよね。
協力していただいた皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。これからも子どもたちのために何ができるのかを考え、ファンドレイズ活動を通して支援を続けていきたいと思っています。
–PSPCFではその後、どんな活動を行っていますか。
2018年と2019年は新たな試みとして、ワシントン大学院ビジネス・スクールに通う学生、年間5名を対象に奨学金を貸与するためのチャリティーのゴルフ・トーナメントを開催しました。私とPSP INC前社長の中村が所属する、アルダラというワシントン州の会員制プライベートクラブにお願いをして、メンバー以外のトーナメントを許可してもらいました。PSP INC社員とアルダラ・ゴルフクラブが準備をし、多くの方が参加してくれました。PSPCFでの活動を通して「ありがとう」と言われるのがいちばんうれしいですね。昨年のゴルフ・トーナメントは、残念ながら新型コロナウイルスの影響で中止になってしまいました。今年も難しいかもしれません。
PSP INCでは、コロナの影響が大きいレストラン業界への支援として、オンラインのメニュー作成プログラムを無料公開しています(https://restaurantsareback.com)。今は、PSP INC製品が少しでも支援につながればうれしいという思いで、次に何ができるのかを考えています。
内倉憲一■85年に駐在員としてシアトルに赴任。会社のアメリカからの撤退を機に、87年にPSP INCを設立。現在は会長職に就く。ベルビューに本社オフィスを構え、ITサービスを提供する。 www.pspinc.com