今から考える日本への永住帰国
現在はアメリカに住んでいるけれど、いつかは日本に戻りたい! そんなあなたに役立つ知識を、日本帰国支援のエキスパートが提供。
前回、日本へ本帰国する場合の手続きのひとつに、公的年金(以下年金)の変更届や請求手続きがあると説明しましたが、それは日本の年金だけでなく米国の年金(Social Security)も同様です。今回は米国の年金について主な手続きを紹介します。
米国の年金:すでに受給中の人
米国居住中から米国の年金請求手続きを行い、受給している場合は、帰国後に住所および銀行口座(年金振込先)を米国から日本へ変更します。本帰国前に日本での住所がわかり、すでに日本で銀行口座を持っていれば、帰国前でも米国内の年金事務所(Social Security Administration Office)で変更手続きができますが、英語が不得意であれば帰国後を待ったほうが便利かもしれません。
と言うのも、帰国後は駐日米国大使館の年金課へ電話またはメールで手続きを依頼するため、日本語対応の窓口となるからです。変更手続きの依頼をすると、変更届の書類(英文)が郵送されるので、必要事項を記入して返送します。
なお、住所、銀行口座をあえて米国のままにしておく場合、変更手続きをする必要はありません。
米国の年金:まだ受給していない人
米国の年金は、標準受給開始年齢前でまだ受給していない人が日本へ本帰国後に請求する場合、日本でも請求手続きができます。日本は米国と社会保障協定を締結しているため、双方の年金事務所で相手国の年金請求書類を受け付けています。日本年金機構の事務所は全国の市区町村にあり、窓口担当者から日本語で書類内容などの説明が受けられるので、記入方法がわからない場合は教えてもらいましょう。米国内の年金事務所での手続きでは英語のみの対応となり、日本ほどスムーズに進みにくいため、この点においては対照的と言えます。
年金請求書類は年金事務所から駐日米国大使館の年金課に送られ、後日、大使館から電話インタビューのための連絡があります。これで手続きは完了です。現在は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米国の年金請求手続きには6カ月以上かかるようです。
米国銀行口座の解約は手続きが完了してから
前述の通り、変更手続きには数カ月を要します。日本へ帰国したからと、これまでの年金受け取り用の米国の銀行口座を解約してしまうと、変更手続き中の期間、口座がないために年金が振り込まれず、米社会保障局(Social Security Administration)へ戻されてしまいます。口座の解約は、日本の銀行口座へ変更手続きが完了し、実際に入金を確認してからにしましょう。
日本の銀行口座への変更手続きが完了する前に米国の銀行口座を解約して年金の振り込みができなかった場合でも、その分の年金はあとで申請すれば取り戻せます。しかし、一定期間過ぎてしまった分は取り戻せない場合があるので要注意です。
WEPによる米国の年金の減額措置
駐日米国大使館の担当者と電話で話す際に、日本の年金を受給しているかどうか聞かれる場合があります。もしくは住所、口座の変更届のほかに、日本の年金に関する質問書が送られます。この質問書に、受給している日本の年金について回答すると、一定の条件の該当者については米国の年金が減額されます。これは外国の年金を受給すると米国の年金が一定額の減額となる制度(WEP)によるものです。条件や減額幅など、本制度の詳細は公式ウェブサイトを参照してください(www.ssa.gov/benefits/retirement/planner/wep.html)。
米国居住中、条件に該当するにもかかわらず、減額されずに米国の年金を受給している人もいます。これは、日本の年金受給の有無については自己申告制なので、本制度を知らずに米国の年金を請求しているケースが多いためです。そうした人が日本帰国時の変更手続きにより日本の年金受給を申告すると、米国の年金は減額されます。すでに受給した分もさかのぼって減額措置の対象となるため、過去の減額分は将来の年金額から一定分を相殺する形で、さらに減額されます。
専門的な内容のため、わかりづらい点もあるかと思います。手続きの詳細については、帰国後に日本の年金事務所や駐日米国大使館へ電話(またはメール)で問い合わせてみると良いでしょう。
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