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メイド・イン・ジャパンで循環型社会を考える 前編〜ゆる〜くSDGsな消費者生活

SDGsとは「持続可能な開発目標」。環境対策や貧困撲滅、ジェンダー平等などなど、大きな目標はたくさんあるけれど、私にもできることって? サステナブルで豊かなおうち時間を目指すべく「地球に、人に、そして自分に優しく」をテーマに、今気になるモノやコトを紹介!

年末、ヨガとの「再会」を果たした旨を本コラムにしたためた。そのおかげか否か、興味深い情報が耳に入ってきた。「い草ヨガマットなるものが、最近アメリカでローンチされたらしいですよ~」。つまり……畳? 気になる。ヨガマットを買ったばっかりだけど。よくよく聞いてみると、正確には「タタミ禅マット」という製品で、Kohakuというブランドが展開しているらしい。熊本産のい草を100パーセント使用し、現地の熟練職人が生産しているという。畳業界は近年、安価な外国製品に押され、さらに後継者不足の影響もあり、存続の危機にさらされている。そんな業界を盛り立てようと日本の伝統技術の魅力を世界に広めるべく、活動しているそう。

タタミ禅マット・ヘリンボーン($195)。100パーセント熊本県産のい草を使用した自然な香りが最大の魅力。「心が落ち着く香り」、「リラックスできる」と好評だそう

その昔、「アメリカに居を構えるなら、せめて小上がり程度でも畳が欲しいなぁ……」と思ったことがある。しかしその当時は、日本製の畳を個人輸入するのは、どうやらなかなか大変(=とっても高価)らしいと分かり、現実的ではなかった。だからと言ってはなんだが、今回はメディア業界にいる特権を最大限活用し、KohakuのCEO小田竜輝りゅうきさんに詳しく話を聞くことに成功。ラッキーだ。そんなわけで、久しぶりにインタビューで紹介したい。

裏面は環境に配慮したリサイクル可能なTPE素材(ゴムのような弾性を持つ柔らかいブラスチック素材)を採用し、優れたグリップ力とクッション性を実現している。禅マットのほか、い草のコースター($12)やプレースマット($25)も販売

い草農家の畑野泰人さん(中央)、日本で生産管理を担当する深見さん(右)と小田さん。かって1万世帯以上いた熊本県のい草農家は、現在200世帯を下回る状況だという

そもそも「タタミ禅マット」とはどういう商品なのだろう? 「100パーセント熊本県産の畳表たたみおもてを使用し、自然素材ならではの心地よさと伝統的な美しさを兼ね備えています。ヨガ、瞑想、ストレッチ、茶道など、心身のリラックスを求める幅広い方にお勧めです」。い草には、森林浴で感じられる「フィトンチッド」という香り成分が含まれており、リラックス効果や安眠効果が期待できるという。「日々のストレスを解消したい方、集中力を高めたい方、安らぎの時間を大切にしたい方にぜひ使っていただきたいマットです」

熊本県は日本国内のい草生産量の95パーセント以上を誇り、最高級のい草が育つ地域。ところが今は業界の衰退が深刻化していると言う。「私たちは現地の熟練職人の方々に生産を依頼し、完成品を直接購入することで、地域経済の活性化と伝統技術の継承に貢献したいと考えています」。なるほど。つまり文化・伝統の持続を可能にするためのビジネスというわけだ。ただ、日本国産、職人技術、と聞くと、なんとなくそれだけで、「良さそう」とか「サステナブルな気がする」とか思い込みがち。でも実際はどうなんだろう。ということで畳とSDGsについてもう少し突き詰めてみようか。続きは次回、後編で!

Kohaku America LLC
https://kohakumats.com

畳製品とその文化を通じ、落ち着きや安らぎを届けるブランドとして、2024 年 12月末にスタート。畳が時を重ねるごとに美しい琥珀色へと変わるように、同社の製品も長く愛され、使い込むほどに味わいが増していくことを願い、ブランド名「Kohaku(琥珀)」を冠している。伝統を守りつつ現代のライフスタイルに合うデザインや機能性を取り入れ、日常に自然に溶け込む製品を開発。畳文化を世界へ広め、日本の伝統文化、畳を後世に残し、次世代へと継承していくことを目指す。

小田竜輝■
熊本県山鹿市出身。関西学院大学経済学部卒業。商社で営業として東京勤務ののち、ワシントン大学のビジネスコースに留学。ふるさとの伝統的特産であるい草と畳の魅力を海外に発信し、業界を活性化させたいとの思いから、在学中に日本在住の友人、深見裕介氏とともにKohaku America LLCを設立。現在はCEOとしてシアトルを拠点に活動中。もしやと思い「kintsugi Seattle」で調べてみてびっくり。シアトルの日系ギフトショップ、KOBOのウェブサイトで金継ぎの修復サービスが紹介されていた(さすが)。カンザスで金継ぎによる行っているのは、日本出身のマイコさんと、シアトルでガラス職人をしていたというジョセフさんの2 人。プロに依頼するとそれなりにお値段はするが、もし大切な器で諦めきれないものがあったらぜひお願いしてみては?

 

加藤 瞳
東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨーク市立大学シネマ&メディア・スタディーズ修士。2011年、元バリスタの経歴が縁でシアトルへ。北米報知社編集部員を経て、現在はフリーランスライターとして活動中。シアトルからフェリー圏内に在住。特技は編み物と社交ダンス。服と写真、コーヒー、本が好き。