栄養学で若返り!スローエイジング
ゆっくりときれいに年を重ねることを目指す「スローエイジング」という考え方。更年期が気になる大人の女性に向けて栄養学の発展したアメリカ在住だからこそ実践したい、元気で若い体づくりを提案します。
メンタルヘルスと栄養素の関係
私たちの生活に大きな環境の変化を起こしたパンデミック。感染状況は落ち着いてきたものの、精神的影響は残り、たくさんの人たちが今も苦しんでいます。精神状態の向上に貢献する栄養素がいくつかありますので、ぜひ取り入れてみてください。
メンタルヘルスの悩みが深まる前に
精神疾患は身体的疾患の症状と違い、目で確かめられない部分があり、なんとなく落ち込むことや心配することが多くても、放っておけば治ると思いがち。でも、気が付かないうちに症状が悪化するケースが少なくなく、うつや不安症ほか、パニック障害などを引き起こしかねません。 メンタルヘルス不調の原因は遺伝、生まれ育った環境、人生経験などさまざまで、それらが複雑に絡まって症状として現れます。また、神経伝達物質のバランスの崩れから起こるとも考えられています。
精神状態を向上させるための処方せん薬も各種ありますが、栄養素の吸収に悪影響を与えますので、服用には注意が必要です。以下、メンタルヘルスについて、栄養面で気を付けたいことを中心に紹介していきたいと思います。
脳機能と腸内フローラの関係
腸は第2の脳と言われるほど、脳機能とメンタルヘルスに大きく関係しています。たとえば、幸福感や安心感などといった感情、また睡眠や消化などをつかさどるのが、セロトニンと言われる神経伝達物質です。セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから生成されますが、トリプトファンは体内で作られないため、レバー、大豆製品、乳製品、ナッツ類など、食事から摂取する必要があります。
実は、約90%のセロトニンは腸内で生成されます。つまり、腸内環境の良し悪しがメンタルヘルスにとても大きく影響することがわかります。また、栄養素も腸内で吸収されるため、腸内環境の悪化や腸内フローラと呼ばれる腸内細菌のバランスが崩れると、脳機能に不可欠なビタミンB群やマグネシウムなどの栄養が吸収されず、気分の落ち込みや慢性疲労などの症状が現れます。
腸内バリアが崩れると、身体に属しない異物が侵入し、さらに免疫細胞にも影響することから、体内炎症などを起こすリスクが上がります。腸内環境を向上できるよう、食物繊維の多い食品を取り入れましょう。逆に避けたいのが、腸に悪影響を与える砂糖、精製食品、飽和脂肪やトランス脂肪を含む食品です。
メンタルヘルスに大切な栄養素とは
次に挙げる栄養素は特に、脳や神経細胞が機能するために欠かせません。うつや不安症になり、食欲が低下して食事では取り入れにくい場合も、できるだけサプリで摂取することをおすすめします。
特にB12と葉酸はセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の生成過程で必須。水溶性のため、すぐに排出される特徴があり、食事だけでなくサプリからもできる限り摂取したいところ。肉、卵、乳製品といった動物性タンパク質に豊富。植物性であれば、緑色の野菜、豆類、そしてニュートリショナル・イーストや全粒粉食品に多く含まれます。
●マグネシウム:
睡眠や安心感を促進。GABAなどの抑制性神経伝達物質の機能を維持しやすくなります。典型的なアメリカ食では不足しがちなため、米国では人口の約50%がマグネシウム不足とも言われます。主にオーツや玄米などの全粒粉食品、パンプキンやチア、アーモンドといったナッツや種、ひよこ豆や黒豆を始めとする豆類から摂取できます。
●亜鉛:
神経細胞のコミュニケーションだけでなく、DNA生成などにも関わる栄養素。潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)や糖尿病などの病気があると、亜鉛吸収に悪影響を与えます。亜鉛の摂取には、カキやカニ、エビ、青魚などの魚介類に加え、牛肉、パンプキンシード、全粒シリアルを食べるようにすると良いでしょう。
●オメガ脂肪酸:
抗炎症作用のある脂肪酸。人間の体では作ることができないため、食事から摂取する必要があります。脳の60%は脂肪でできており、細胞内膜も脂肪で成り立っています。良質の脂肪の摂取により、脳細胞や神経細胞がうまく機能します。オメガ脂肪酸が含まれる食品には主に魚、アボカド、チアやフラックスなどの種、またはナッツ類、植物性油が挙げられます。
●抗酸化物質:
日々生成されて炎症を引き起こす活性酸素を取り除く働きをします。緑茶やコーヒー、ベリーやオレンジなどの果物、ケールやニンジンなどの濃い色の野菜を積極的に取り入れて。
忙しい日々の中でも適度な運動と休息を
気分が落ち込み、うつや不安症などの精神疾患に陥ると、どうしても家にひきこもりがちになり、運動量も低下してしまいます。運動をすると、血液が循環してエネルギー生成に必要な酸素が細胞に行きわたり、元気が出て気分もスッキリします。週1、2回からでも良いので、ウォーキングや軽いジョギングなどを習慣付けたいですね。また、ハイキングなどに出かけて自然に触れることも効果的。朝起きて太陽の光を10分浴びるだけでも、脳機能が活性化されます。
精神疾患になると罪悪感や努力不足感を覚えやすく、さらに気分が落ち込みます。無理をせず、何もしたくない時はゆっくり休みましょう。アロマテラピーや音楽なども活用し、安らぎと癒しの時間を作れるよう心がけてみてください。
- Nutrirional psychiatry: Your brain on food
https://www.health.harvard.edu/blog/nutritional-psychiatry-your-brain-on-food-201511168626 - Rverything you Need to Know About Serotonin
https://www.healthline.com/health/mental-health/serotonin - Magnesium Fact Sheet for Health Professionals
https://ods.od.nih.gov/factsheets/Magnesium-HealthProfessional/ - The Emerging Role for Zinc in Depression and Psychosis
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5492454/ - Micronutrient Inadequacies in the US Population: an Overview
https://lpi.oregonstate.edu/mic/micronutrient-inadequacies/overview - Omega-3 Fatty Acids and Mood Disorders
https://www.todaysdietitian.com/newarchives/011012p22.shtml