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気になる女性特有のがんについて日本語で相談できる窓口

乳がん、卵巣がん、子宮がん患者の心に寄り添い、悩める女性たちをサポート。現在のアメリカの医療制度で今、私たちができることを探ります。

第1回 気になる女性特有のがんについて日本語で相談できる窓口

私たちSHARE​日本語プログラムでは、​2013​年からニューヨークを拠点に、乳がんまたは卵巣がんと診断されたアメリカ在住の日本人や日系人の方々をサポートしてきました。​2020​年に子宮がん患者への支援も開始し、この​8​月に西海岸でもサービスを無料で届ける活動をスタートしました。西海岸の日系コミュニティーは長い歴史の背景から、ニューヨークとはまた違ったところもあるかと思いましたが、想像していた以上に温かく迎えられ、とてもうれしい気持ちです。

以前、ニューヨークの日系コミュニティー紙にコラムを寄稿していたのですが、改めて読み返すと今の生活には当てはまらない内容の多いことに気付きました。5、6年前と比べると今では医療制度も変わっています。また、多くの新薬の研究が実を結び、次々と認可され、患者には治療の選択肢が増えています。たとえば、乳がんに関しては化学治療だけでなく分子標的薬が開発され、ステージ4のがんは転移がんと呼ばれるようになり、末期がんとは区別されています。今では多くの方がサポートミーティングなどに参加することで、お互いを支え合いながら毎日を明るく過ごしています。また、遺伝子の研究が進み、早期発見のがん患者さんが化学治療を行う必要があるか否かまで、わかるようになりました。

このように、現在のがん治療は、昔のテレビドラマのような恐ろしいイメージを持ったものではなくなっています。それに伴い、私たちもその変化を知る必要があります。

SHARE​日本語プログラムではこれまで「医師に言われるがままの患者」ではなく「自分のために自分の健康を自分で守れる患者」になれるよう、セミナーや勉強会を実施し、ニュースレターでの最新医療情報の発信などをしてきました。たとえ日本でがんと診断されたとしても、すぐにその現実を受け入れるのはとても困難で、医師が治療方針を説明してくれても、その場で全てを理解するのは難しいことだと思います。アメリカに住む私たちは、さらにその「理解が難しい」という気持ちを日本語で話せる人が周りにいないという困難とも向き合うことになるのです。自分が思っていたよりもアメリカの生活に対応できていなかったと落ち込むかもしれませんし、ひとりで向き合っていかなければならない不安はつのるばかりで、「自分は外国でひとりぽっちだ」と孤独感を覚えるはずです。

そんな時、長く外国生活をしていても私たちから消えることのない日本人の価値観や気質を共有できる人が、自分の思いを聞いてくれたらどれだけ心強いでしょう。私たち日本人は他のアジア人とは違い、家族と離れて単身で渡米するケースが多いように感じます。留学、起業、結婚など理由はさまざまですが、他のアジア人のようにアメリカの市民権を取って日本の家族を迎え入れる人はまれではないでしょうか。

SHARE​日本語プログラムは、アメリカで病気になった時、ひとりで治療に向き合わなくても済むネットワークを作る活動をしています。これまで多くの方々をサポートする中で、皆さんに共通する悩みも見えてきました。たとえば、病院や医師をどう決めるか、医療保険でどのようにカバーされるのか、想定外の請求書はどう扱えば良いのか、支払えない時はどうすれば良いのか、仕事と家庭との両立の問題、まだ小さい子どもや日本にいる高齢の親にどのように自分の病気を伝えれば良いのか、そんな中で自分は病気とどう向き合えば良いのか、などです。

SHARE​日本語プログラムは、皆さんそれぞれに合った答えを出すためのお手伝いをしてきました。皆さんの経験は、これからの患者さんを助けるための貴重な情報源にもなります。今後はこのコラムを通して、シアトルの皆さんにも乳がん、卵巣がん、子宮がん治療の選択肢や日米での医療制度の違い、抗がん治療の乗り越え方のヒントなど、役立つ情報をお届けしていく予定です。病気が回復して元気になるまでお互いに寄りかかれる輪を作る活動を、西海岸でも広めていきたいと思います。

SHARE 日本語プログラム

ヘルプライン:☎347-220-1110(月~金6am~2pm)
問い合わせ・患者サポートミーティング申し込み:​admin@sharejp.org
詳細https://sharejp.org

1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、アメリカの最新医療事情を日本語で提供する。
1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、アメリカの最新医療事情を日本語で提供する。