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シアトル石川県人会による能登半島地震の被災地支援イベント〜みんなの広場

シアトル石川県人会による
能登半島地震の被災地支援イベント

2月11日に、バション島のムカイ・ファームにて、能登半島地震の被災地支援イベントが開催された。元日に起きた地震では、多くの方々が家族や友人を失い、生まれ育った地域が一瞬で破壊され、仕事や学業も中断せざるを得なくなった。2月19日現在、内閣府と石川県の発表によると、石川県で241人の死亡が確認されたほか、9人の安否が不明のまま、住宅の被害は7万棟を超え、能登地方を中心に2万3,000戸以上が断水、1,100戸が停電、避難所利用者は1万2,524人に上る。

シアトル石川県人会代表の舟木拓也さんが、現地の被害状況を報告

同イベントはシアトル在住者の有志から生まれた。主催者のルークあゆみさんは羽咋はくい 市の出身で、年末年始の帰省中に被災。「息子と里帰り中でした。壺や額が落ちて壊れましたが、家族は無事。断水の6日間は自宅の井戸水を近所の人と分け合いました」と振り返る。ルークさんとシアトル石川県人会を立ち上げ、代表を務める舟木拓也さんの実家は能登半島先端の珠洲すずし 市にあり、地震で大きく損壊した。両親は今も避難所生活を余儀なくされている。現況を少しでも知って欲しいという思いから、企画と準備を進めてきた。

会場のムカイ・ファームは、日系2世のマサヒロ・ムカイ氏が父親から受け継いだイチゴ農園を飛躍的に拡大させ、1930年代当時、画期的だった冷凍フルーツの技術を開発し、その分野の先駆者となった。現在、ムカイ邸とその日本庭園はNPO団体が管理・運営する。イベント当日はリヤ・クオ理事長が登壇し、その歴史について話した。

真剣に聞き入るイベント参加者

在シアトル日本国総領事館の角 潤一主席領事も駆け付け、挨拶と乾杯の音頭を取った。ご自身のイラクやアフガニスタンなどの紛争地での経験から、能登半島地震で被災された多くの方々の中でも、とりわけ警察官や消防士など同じく公務を担う方々への思いを語り、シアトル石川県人会の会員第1号にも名乗りを上げた。同発会式では、舟木代表が写真や地図で地震の状況を説明、支援の必要性を訴えた。また、学生時代の友人が帰省先の珠洲市で最愛の妻と子ども3人を土砂崩れで亡くしたと語った。聴衆からため息が漏れ、聞いているだけで、もし自分の家族が、子どもが、と考えると、胸が締め付けられる思いだった。

そして最後は、世界的に有名なバイオリニスト、橋森ゆう希さんによるチャリティー・コンサート。橋森さんは東日本大震災の際、シカゴでさまざまなチャリティー企画を実施するなど被災地支援に積極的に携わった。今回の能登半島地震では、姪2人が石川県の祖父母宅で被災。2016年に起きた熊本地震では、熊本在住の義父が被災し、家中がめちゃくちゃになったそう。多忙なスケジュールの中、チャリティー・コンサート出演を快諾した橋森さんと共演するのは、ピアニストのフディエフ希美のぞみさんだ。心打つ感動の調べに、観客席からはすすり泣く声も聞こえた。今回のイベント立ち上げ人のひとりで、ラ・レーチェ・リーグのリーダーを務める光岡いずみさんは、「生きる力と希望へのエネルギーをいただきました。今ここでできることを少しでも続け、自然豊かな能登の復興を願います」と述べた。

右から、ルークあゆみさん、橋森ゆう希さん、角 潤一主席領事、フディエフ希美さん、リヤ・クオ理事長、舟木拓也さん、筆者、光岡いずみさん

また会場では、義援金集めのため、白富士酒造が日本酒と酒粕を無料で提供。冨沢真理さんは、福島県双葉町で創業300年以上続く冨沢酒造店の長女だ。2011年の東日本大震災で被災し、数々の困難を乗り越え、ウッディンビルで酒造りを再開。震災から10年以上の歳月を経て、シアトルの地酒「SHIRAFUJI」として生まれ変わった。冨沢さんは「東日本大震災の時は世界中の方々から応援してもらった。今度は私たちが返す番。微力ながらサポートしたい」と話す。東日本大震災の被災地支援活動を長年行うソングス・オブ・ホープの本多ゆかさんは、その酒粕を使ったパウンドケーキを振る舞い、好評を得ていた。

着付け担当の津岡昌子さんを始め、日系団体や学校関係者の方々、会場手伝いのボランティアの皆さん、ひとりひとりの思いが集結した素晴らしいイベントとなった。当日の寄付金は約900ドル、ゴーファンドミーでは約500ドル、現在計3,000ドルを超える義援金が集まっている。

シアトル石川県人会では、今後もムカイ・ファームでのイベントを通じて復興支援を続けていく予定だ。入会や会場手伝いのボランティアなどに興味のある方は、ルークさん(ayuayusnake@gmail.com)まで連絡を。

(長野弘子/シアトル)

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ワシントン州認定メンタルヘルス・カウンセラー(認定ID:LH60996161)。ニューヨークと東京をベースに、ジャーナリストとして多数の記事を寄稿。東日本大震災をきっかけに2011年にシアトルへ移住し、災害や事故などでトラウマを抱える人々をサポートするためノースウエスト大学院で臨床心理学を専攻。米大手セラピー・エージェンシーで5年間働いた後に独立。現在、マイクロソフト本社の常駐セラピストを務める。hiroko@lifefulcounseling.com