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麻葉の見た―アーミッシュの世界 ~第9回~

10年前からアーミッシュ文化について調べている筆者が、2度にわたってペンシルヴァニア州、オハイオ州のアーミッシュ・コミュニティーで暮らした体験を紹介。

寄稿・写真 吉田麻葉

◆洋服を着て、車を運転し、スマホも持っているアーミッシュ

私を受け入れてくれた家族には、子どもが10人います。一番上の長女は20歳。二番目は男の子で18歳です。私は10年前にもこの家族と交流があったのですが、今回彼に会ってびっくりしました。なぜかというと、大きなバンを運転し、私たちと同じような洋服を着て、スマートフォンまで持っていたからです。洋服、スマホ、車。これらはすべて、アーミッシュが「持たない」という選択をしているものです。

左が筆者のレンタカー、右は長男が運転していたバン
左が筆者のレンタカー右は長男が運転していたバン

◆洗礼を受けるまで、正式なアーミッシュではない

彼らは子どものときからアーミッシュとして育てられますが、洗礼を受けるまではルールを破っても咎められることはありません。この長男もまだ洗礼前。それゆえ、免許をとって車を運転することも、スマートフォンを持つことも、洋服を着ることも許されているのです。

◆洗礼を受ける前の葛藤

アーミッシュの若者にとって、洗礼を受けるかどうかは一大決心です。すでに洗礼を受けて結婚している20歳の長女はこう言っていました。
「洗礼を受ける決心をするのは難しかった。もちろん自由はあるんだけど。でも、オプションが少なくなるから……」と。それでも、若者の約90%が、自らの意思で洗礼を受け、アーミッシュになることを選んでいるようです。だからこそアーミッシュの人口はどんどん増えており、20年ごとに倍になるという速さです。

アーミッシュになることを選び、洗礼を決断した長女
アーミッシュになることを選び洗礼を決断した長女

◆長男が選ぶ道は?

アーミッシュとして生きていくか、ノンアーミッシュとして生きていくか。長男はまさに今、葛藤している時期なのだと思います。お母さんはこう言っていました。「私たちはもちろん、あの子にはアーミッシュになることを選択して欲しい。でも、特に何も言わないわよ」。洗礼は親からのプレッシャーではなく、自分の意思で受けるもの。若いときに自分自身で決断しているからこそ、彼らはその後も特異な生活様式を貫くことができるのかもしれません。

[麻葉アーミッシュの世界]