未来への懸け橋

すずきじゅんいち「二世三部作」上映会

主に日系二世で構成されたアメリカ陸軍情報部 すずきじゅんいち監督「二世三部作」シリーズの2作目『442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍（442 ― Live with Honor, Die with Dignity）』と3作目『二つの祖国で・日系陸軍情報部（MIS－Human Secret Weapon）』の上映会が、6月27日と28日の2日にわたって開催される。

第二次世界大戦時の日系アメリカ人史を描いたすずきじゅんいち監督「二世三部作」シリーズの1作目『東洋宮武が覗いた時代（Toyo’s Camera）』の上映会が去る5月3日、クイーンアンのSIFFシネマアップタウンにて開催され、280人が足を運んだ。 同上映会は、シアトル国際映画祭（SIFF）、ワシントン州日米協会（JASSW）、日系アメリカ人市民団体（JACL）・シアトルおよびピュアラップチャプター、日系コンサーンズ、二世復員軍人会（NVC）／二世復員軍人会ファウンデーション、北米報知財団の共催および在シアトル日本国総領事館の後援によるもので、第2、第3作目の上映会がそれぞれ6月27日と28日に行われる。

『442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍（442 ― Live with Honor, Die with Dignity）』

第2作目の『442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍（442 ― Live with Honor, Die with Dignity）』は、第二次世界大戦時に日系アメリカ人だけで構成された米軍第442連隊戦闘団について元兵士たちの証言をまとめたドキュメンタリー映画だ。「Go For Broke!（当たって砕けろ！）」を合言葉に、フランスをはじめとするナチス占領下のヨーロッパ諸国の町を次々に解放し、強制収容されていたユダヤ人の解放などに貢献した。442部隊は親の祖国である日本と戦う苦悩だけでなく、アメリカ国内では人種差別とも戦わねばならなかった。しかし、その勇敢な働きに対し、当時のアメリカ合衆国大統領ハリー・トルーマンから「You fought not only the enemy, but you fought prejudice, and you have won.（諸君は敵だけでなく、偏見とも戦い勝利した）」と称えられた。442連隊は、その規模と機関においてアメリカ軍史上最も多くの勲章を受けた部隊として歴史に燦然と輝いている。こうした歴史を背景に、同作品は、日系人という理由で強制収容所に入れられたにもかかわらずアメリカへの忠誠を示そうと出征した兵士たちの物語を描いている。 『二つの祖国で・日系陸軍情報部（MIS－Human Secret Weapon）』

第3作目、『二つの祖国で・日系陸軍情報部（MIS－Human Secret Weapon）』は、主に日系二世で構成された秘密情報部局、アメリカ陸軍情報部（Military Intelligence Service, M.I.S.）に焦点を当てている。トルーマン大統領に「The human secret weapon for the U.S. Armed Force（人間秘密兵器）」と呼ばれたM.I.S.。人種差別を受けながらもアメリカに忠誠を誓い、対日戦での翻訳や情報収集、文書の分析、投降の呼びかけ、捕虜の尋問などを行い、日本占領時には、日米の懸け橋としておよそ3,000人の同局部員が日本の復興に貢献した。同映画は、日本ではアメリカ人として差別され、アメリカではジャップと蔑まれながらも、両国のために尽くした二世たちの人生を描き、国を愛することとは何か、戦争の矛盾、人種差別の悲しみ、平和の尊さを訴える作品になっている。 これらの作品は、単に歴史を振り返るためだけではなく、よりよい未来を作るために、出身地や人種による差別や偏見について考え、現代社会を見直すよい機会を与えてくれる。なお、26日、27日の両日は、日本からすずき監督と夫人で女優の榊原るみさんをゲストに迎え、上映後に質疑応答の時間が設けられる。

監督プロフィール：すずきじゅんいち 東京大学文学部卒。過去34年の監督生活で27本の長編映画を監督、13本の映画プロデュース、16本の映画シナリオを執筆する。そのほかテレビドキュメンタリーなど多数を構成演出。2001年、アメリカに移住し日系アメリカ人の歴史を綴った日米合作三部作映画、『東洋宮武が覗いた時代』、『442日系部隊』、『二つの祖国で』を企画、脚本、監督。マウイ映画祭観客特別賞、山路ふみ子賞文化賞、日本映画評論家大賞を受賞。