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「アメリカン・ファクトリー」コロナ後の世界を俯瞰する

注目の新作ムービー

コロナ後の世界を俯瞰する

American Factory
邦題「アメリカン・ファクトリー」

The Great Hack
邦題「グレート・ハック:SNS 史上最悪のスキャンダル」

長い自粛生活を経て、誰もが生活の激変を体験したかと思う。今、新しい生活様式が作り出されつつあるが、これから先、私たちの暮らしはどうなっていくのか。こんな時期だからこそ、必見のドキュメンタリー映画を2作紹介したい。共にNetflixが日本語字幕付きで配信している作品だ。

「American Factory」は、オハイオ州で撤退したGM(ゼネラルモーターズ)の自動車工場施設を買い取った中国の自動車ガラス工場、フーヤオで起きた労使の軋轢を2015年から2017年末まで追った作品。失業していた元GMの労働者たちはフーヤオでスムーズに再スタートを切ったが、彼らを待っていたのはGMとは比較にならない低賃金と過酷な労働だった。ところが共に働く中国からの労働者の効率や生産性は圧倒的に高く、元GMの労働者は怠け者扱いされていく。同時に、家族を中国に残し、合宿生活しながら黙々と働く中国人労働者の実態なども描かれ、米中の相容れない就業意識の落差がリアルに浮かび上がってくる。

だが、ここまでは悲劇的だが想定内の展開。驚くのはこの落差を企業がどう解決したか。フーヤオはこの変革の結果、2018年に初めて黒字となる。効率と収益を追求する生産業の実態と未来を見せてくれる苦く優れた作品だった。本作は、オバマ前大統領夫妻が立ち上げた映画製作会社の第1作で、今年のアカデミー賞で最優秀ドキメンタリー賞を受賞している。

「The Great Hack」は、FacebookやGoogleの個人データを違法に利用し、トランプ大統領当選や英国EU離脱のキャンペーン戦略を立てた選挙コンサルティング企業、ケンブリッジ・アナリティカ (以下CA) の違法な個人データ利用の全容と内部告発を追っていく内容。毎日、何気なくクリックするFacebook上の「Like」や「Share」、Googleを使った検索など個人の利用履歴は全て膨大なデータとして残る。CAはそのビッグデータを基に、個人の嗜好や未来行動などのプロファイリングを行い、選挙戦略を立てていた。つまり、利用者は知らずにCAに個人情報を提供し、トランプ当選に貢献していたかもしれないのだ。CAのデータ取得の違法性を追う英国のジャーナリストや、CAに自分のプロファイリング開示を求めた学者、内部告発する若者などから集められた証言は、まさに目からウロコの衝撃的な内容だった。

コロナ後の生活の中で、ネットやSNSへの依存度がより高まっていると思う。SNSはタダだし、気ままにクリックして自由な表現を楽しめるが、ネットは本当に私たちを自由にしたのだろうか。本作を観た後、SNSをやめようと思う人も多いかもしれない。内部告発者の「データは今、最も価値のある資産」という発言が、今という時代を象徴しているように思えてならなかった。

American Factory
邦題「アメリカン・ファクトリー」

再生時間:1時間50分

監督:スティーヴン・ボグナー、ジュリア・ライカート

Netflixで配信中 (日本語字幕付き)


The Great Hack
邦題「グレート・ハック:SNS 史上最悪のスキャンダル」

再生時間:1時間54分

監督:カリム・アーメル、ジェヘイン・ ヌージャイム

Netflixで配信中 (日本語字幕付き)