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Thirteen Lives/13人の命〜注目の最新ムービー

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あの「現代の奇跡」を描く


Thirteen Lives

邦題「13人の命」

2018年にタイで少年サッカーチームのコーチと選手の計13人が、洞窟に閉じ込められてしまった「タムルアン洞窟の遭難事故」の救出作戦を描いた劇映画。この遭難事故に関しては、「ケイブ・レスキュー: タイ洞窟決死の救出」、「ザ・ケイブ レスキューダイバー決死の18日間」などのドキュメンタリーや劇映画がこれまで何作もあり、救出作戦がいかにあり得ない状況下で実行されたのかを再認識させられた。昨年公開されたドキュメンタリー映画「THE RESCUE 奇跡を起こした者たち」は、実際に救出をしたダイバーたちの証言を集め、とりわけ印象深い作品になっていた。

さて、そのハリウッド版と言える本作の監督は、「アポロ13」など実話の映画化に手腕を発揮してきたベテラン、ロン・ハワードだ。複雑な救出作戦の過程を手際良くまとめ、単なるサバイバル作品を超える出来栄え。タイ文化と西欧文化の違いや、軍人とダイバーたち、政治家と家族など、救出に関わった多くの人々の思いを反映させている。

11歳から16歳のサッカー少年たちが洞窟に遊びに行き、豪雨で水没した洞窟に閉じ込められてしまう。タイの特殊部隊が洞窟にダイブするが、少年たちは見つからなかった。救援隊に絶望感が広がる中、趣味で洞窟ダイビングをしていたイギリス人のリチャード・スタントン(ヴィゴ・モーテンセン)とジョン・ボランセン(コリン・ファレル)のふたりに声がかかる。

現地に到着して早々に、ふたりは洞窟の何キロも奥にいる少年たちを発見。家族、多くの救援部隊は歓喜する。だが、いかにしてこの子たちを、プロのダイバーでも数時間かかる狭くて暗い洞窟の中から連れ帰ってくるのか? 誰も何のアイデアを出せないでいた。その時、リチャードがダイバーで麻酔医でもあるリチャード・ハリス(ジョエル・エドガートン)をオーストラリアから呼ぼうと言い出す。誰しも猛反対した絶対にあり得ないその方法とは?

麻酔で子どもたちを眠らせて救出というのは、事件当時、報道されていなかった。成功した今だから語れるのだろう。もし失敗していたら、多くの人が重い責任を負っていたに違いない危険な賭けだった。だが、大成功したのである。

ダイバーや救援部隊の活躍が主に描かれた本作。願わくは、どのように取り残された少年たちが空腹と恐怖に打ち勝って、18日間も静かに救援を待つことができたのかをもっと知りたかった。コーチは仏教修行の経験を持つ若者で、彼が12人の子どもたちに瞑想や呼吸法を教えたという。洞窟前の仏像に供物する人々、祈りを捧げる親たち、仏僧に清めてもらったブレスレットを渡す母親など、ダイバーだけが英雄なのではない、という思いも強くした。

子どもたちを助けるために世界中から人が集まり、推定1万人が貢献したと言われるこの救出作戦。まさに現代の奇跡と呼べるだろう。

Thirteen Lives
邦題「13人の命」

上映時間:2時間29分

写真クレジット:United Artists Releasing、Amazon Studio

Amazon Prime Videoで独占配信中。

映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。