シニアがなんだ!カナダで再出発
在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務した後に、2013年定年退職した武田 彰さんが綴るハッピー・シニアライフ。国境を超えるものの、シアトルに隣接する都市であるカナダのバンクーバーB.C.で過ごす海外リタイアメント生活を、お伝えしていきます。
ホリデー・シーズンがやっと終わった
日本の正月に匹敵する北米のクリスマスになじめない。シアトルでの現役当時、独身の私を同僚や友だち夫婦が家に呼んでくれて、お義理でプレゼントをもらうこともあった。しかし、信者でもないのになぜキリスト生誕日を祝わなければならないのかと反発意識が湧くのだ。あるいは、ひとり身の寂しさを認めたくないのかもしれない。北米の大晦日は皆が酒を飲んで騒ぎ、花火も上がるが、元日はこれと言った行事もないので、現役時代は退屈な長休みを利用して大掃除。独りよがりに反発精神を体現したつもりでいた。
毎日が休みの退職後は、この長い休暇がますます厄介になった。祝日は行きつけの店やコミュニティーセンターが閉まるか営業短縮となる。引退生活メイン・イベントたる買い物に出かけても、クリスマス時期にはどこも長い列。年明けの週末が終わる頃、ようやく街が平常に戻り、本来の悠々自適なリタイア生活が再開される。
子どもの頃、わが家ではイブに誰かが京都で買ってきた定番のイチゴのショートケーキを食べ、翌朝目を覚ますと、母が用意したサンタからの贈り物をちょっともらっただけ。年賀状やお年玉がもらえ、白い割烹着を着て浮き浮きいそいそ働く母がとても美しく見えた正月こそ、迎える楽しみがあった。正月の準備が始まると、父や会社関係の大人たちが集まって杵臼の餅つき。
返し手のおばさんのかけ声も調子良く、時々素早く餅を持ち上げて、つき手に空臼をつかせたのもスリル満点で面白かった。大晦日はNHKの「紅白歌合戦」と「ゆく年くる年」を観ながら興奮が頂点に。テレビで百八つの鐘がきっちり間を置いて鳴り始めると、何か世の中がリセットされる準備が整ったように感じて気持ちが引き締まったものだ。
コロナワクチン接種も始まり、次の年末年始には恒例のハワイ旅行くらいできそうだと、早速ワイキキに宿を確保した。来春以降は、日本旅行も実現するだろうか。この年齢になると、慣れない習慣や言語に戸惑う外国の土地より、勝手知ったるも新しい魅力いっぱいの日本に行きたい。それこそ、宿を変える必要のない日本一周クルーズがいい。港町をめぐり、その土地の名物を食べ、日本でしか手に入らない品をいっぱい買いたい。テレビ番組「マツコの知らない世界」などで紹介される垂涎の食べ物も、糖分に気を付けながらうんと試したい。デパ地下やコンビニも大きな魅力。それと、日本ならではの商品を売ると聞くコストコにも行ってみたい。今は、日本に行ったらやりたいことをリストアップ中。
当地でシニアがコロナワクチンを受けられるのは4、5月か。シアトルに住むシニアの友人たちはアポが取れたと喜ぶ1月、いよいよ米国に新大統領が誕生。コロナ対策を考慮した素晴らしい式典を終え、迎える花火のフィナーレをホワイトハウスのバルコニーから眺めるバイデン夫妻の姿をテレビで見ると、何か子どもの頃に経験した日本の元旦のように清々しく、かつ、希望にあふれる雰囲気が伝わった。