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​私をファームに連れてって〜ゆる〜くSDGsな消費者生活Vol.20〜

​SDGsとは「持続可能な開発目標」。環境対策や貧困撲滅、ジェンダー平等などなど、大きな目標はたくさんあるけれど、私にもできることって? サステナブルで豊かなおうち時間を目指すべく「地球に、人に、そして自分に優しく」をテーマに、今気になるモノやコトを紹介!

私は今、悩んでいる。今年こそクリスマスツリーをどうするのか、についてだ。実家は生まれた時から団地住まい。スペースの都合上、クリスマスツリーがなかった。初めてホリデーのシアトルに遊びに来た2009 年、生木のツリーをくくりつけた古めかしい車とすれ違い、「おぉ! これぞアメリカ!」と感動したものである。

この街に腰を据えることが決まった2017 年、私はついにリサーチを開始した。果たしてどんなツリーを選ぶべきなのか、と。ニューヨークに住んでいた頃、それは美しく飾られたツリーを毎年至るところで目にした。しかし、1月も1 週間を過ぎると、そのツリーがゴミ回収日に路肩に横たわっていて、胸が傷んだ。その記憶から、生木のツリーは非エコなのではと感じるようになっていた。毎年切られては捨てられるのであれば、繰り返し使える人工ツリーのほうが良いのでは、と。結局、生まれて初めてのクリスマスツリーは、IKEAの人工ツリーを購入した。ツリーのオレンジ色の明かりは、夜が長いこのシーズンを幸せなムードにしてくれる。

全米で約1万5000のクリスマスツリー農家があり10 万人以上が働いているそう天然ツリーを購入することは地域経済を活性化させ地元農家を支援することにもつながるのだ

ところが昨年、知人から「この辺りではツリーはリサイクルに出される」と聞き、衝撃を受けた。捨てるんじゃないの!? 実はニューヨーク市でも、使用済みツリーは回収され、リサイクルやコンポストに回されていたのだそう。そこで改めて調べ直してみたところ、さらに衝撃を受けた。生木のツリーのほうがエコかもしれない!? 2021年のCNNの記事によれば、人工ツリーの平均的使用期間を6年間とすると、そのカーボンフットプリントは確実に天然木より大きくなるそうだ。というのも、人工ツリーは一般的に石油を原料とするプラスチック製で、そのほとんどが中国から輸入されている。つまり、そのものの安全性は確認されていても生産の過程で有害物質を排出することがあり、その輸送においても大型輸送船や貨物トラックで二酸化炭素を発生させる。しかも廃棄するとなれば、分解に何百年もかかる埋め立てか、有害物質を放出する焼却炉での処理となる。一方で、アメリカの人々が手にする天然ツリーの多くは、近隣の農場で栽培されたものだ。ツリーとして完全に成長するのに平均7年かかり、成長するにつれ空気中の二酸化炭素を吸収する。伐採されても、農家が新たに苗木を植えることでバランスを取っているのだとか。使用後は埋め立ててしまうとメタンガスが発生するが、再利用されチップとして他の木の栄養となるなら言うことはない。

マイIKEAツリーはもちろん引き続き使用するつもりだが、今年は初めてクリスマスツリーのファームに足を運んでみようかしら、なんて考えている。

ドライオレンジ作りにわが家も挑戦オレンジの香りが部屋いっぱいに広がりこれまたハッピー気分にしかしながらカラスが来ないかなと言う夫にはがっかりだ

■カーボンフットプリントとは?
https://sustainablejapan.jp/2016/02/04/carbon-footprint/21073
それぞれの商品・サービスにおいて、原材料の調達から生産、流通、そして廃棄・リサイクルまでに排出される温室効果ガスの排出量を、CO2に換算したものを指す。上記サイトにて歴史から今後の課題まで詳しく知ることができる

■ドライフルーツ・オーナメントの作り方
https://stagetecture.com/christmas-decorations-make-dried-fruit-ornaments
ドライフルーツを使ったクリスマス・デコレーションを紹介しているサイト。誰でも簡単に作れるうえ、おしゃれでサステナブル! ガラス製や木製など、オーナメントもプラスチック製ではなく、自然素材を選ぶのが SDGsの第一歩だ

■Buttonwood Farm
www.buttonwoodfarm.com
レドモンドのバトンウッド・ファームは、ワシントン州唯一の 100% オーガニック認証クリスマスツリー農園。農薬や除草剤などの有害物質がツリーや環境に残らないよう、最も安全でサステナブルな農法を実践しているそう。わが家の近所だったらなぁ〜。

東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨーク市立大学シネマ&メディア・スタディーズ修士。2011年、元バリスタの経歴が縁でシアトルへ。北米報知社編集部員を経て、現在はフリーランスライターとして活動中。シアトルからフェリー圏内に在住。特技は編み物と社交ダンス。服と写真、コーヒー、本が好き。