女子テニスの大坂なおみが9月8日、全米オープンで初優勝しました。男女合わせて日本人選手が4大大会を制覇したのは大坂が初めて。それまでは2014年に錦織 圭が全米オープン決勝まで勝ち進んだのが過去最高でした。
決勝で対戦したのは、大坂が子どもの頃から憧れていたセリーナ・ウィリアムズ。開催国の人気選手で、昨年9月に出産して以来初の4大大会優勝への期待が高まる中、優勝すればマーガレット・スミス・コートが持つ4大大会優勝最多記録(24回)に並ぶという状況も重なり、観客も現地メディアもセリーナの優勝を切望していました。
試合は序盤から大坂が優勢。苦戦を強いられたセリーナは客席からのコーチングに対する審判の警告に猛反発。さらにラケットをへし折って1ポイントを失い、その後も審判へ不満を訴え続けた挙句の果てに罰則で1ゲームを失います。セリーナ寄りの観客が審判に大ブーイングを浴びせる中、大坂はストレート勝ちで優勝を遂げました。
しかし、勝者の顔に笑みなし。それどころか、サンバイザーを深々と引き下ろし、うれし泣きではなかろう涙が伝う顔を隠していました。トロフィー贈呈前まで鳴り響いたブーイングがようやく止んだのは、セリーナが「彼女はよくプレーしました。彼女にとってこれが初めてのグランドスラム優勝なんです」と声を詰まらせながら言ったあとでした。
そして大坂は「みんなが彼女を応援してたのは知っていました。こんな結果になってごめんなさい。試合を見てくれてありがとう」とスピーチ。セリーナへは「プレーしてくれてありがとう」と精一杯のリスペクトを示しました。正々堂々と戦って勝った選手の口から出たのは、驚くことにお詫びの言葉でした。
優勝トロフィーを掲げる彼女の姿も申し訳なさそうでした。これから何度経験しようと、初優勝は一生に一度だけの経験。その日がこうなってしまったのは本当に残念です。それはセリーナも感じたようで、「優勝したばかりなのに、うれしくて泣いてるのか、悲しんでいるのかわからなかった。私が4大大会で初めて優勝した時は違っていた。彼女にそんな思いをさせたくなかった」と記者会見で明かしています。
しかし、ポイントを奪った審判を泥棒呼ばわりしたことに関しては、男子ならもっとひどい罵声を発しても罰せられないと性差別を主張。出産のために離脱し、復帰した暁にはランキングが抹消され、全仏オープンで無名選手と同様に扱われた「女性ならではの」待遇の改善も訴えてきた母セリーナ。全米オープンでは大坂以外の敵とも戦っていたようです。