シアトル地域レドモンドを拠点に活躍するプライベート・トレーナーの島田耕太さんが、自宅でできるトレーニング法を解説します。
美ボディーをつくるトレーニング
「筋トレで筋肉ムキムキ」という誤解
健康的な筋肉とは、縮む性質と伸びる性質の両方を鍛えた筋肉。東京五輪が開催され、日本のメダルラッシュが話題となりましたが、アスリートの中でも五輪レベルの選手は、力がありながら柔軟性もある人たちが多く見られます。「柔軟性と強い筋肉は両立しない」とする見解は間違いです。筋トレと聞くとボディービルダーさながらに「筋肉を大きく強くする」というイメージがあるかと思いますが、それだけではないのです。
スポーツ選手など、筋トレで筋肉は付いたけれど体が重くなって逆効果だったと発言しているのを時々見かけます。それは、強化された筋肉は縮まりやすく、動きにくくなる傾向があるから。サポートの強いゴムほど伸ばすのが難しいのと同じで、筋肉が強くなると関節の動きに制限ができてしまいます。人間の動作の中で筋肉は大きく分けてふたつの性質があります。ひとつは縮む性質。筋力を最大限に引き出すために不可欠なものです。扉を開ける、物を持つ、歩く、階段を上るなどの動作は一時的に筋肉が縮むことによって可能になります。もうひとつは伸びる性質です。伸ばせない筋肉は縮む動作に制限がかかり、筋力まで制限されてしまいます。たとえば、座っている時間が長いと、股関節と背骨をつなぐ腸腰筋という筋肉の伸びる性質が失われ、縮まったままの状態に。そのまま立とうとすれば、腸腰筋が伸びないために腰に負担がかかり、腰痛の原因になります。
スポーツをする方はもちろん、オフィスワークや家事を行う方にとっても、筋トレで両方の筋肉の性質を保つことは大切です。腰痛、肩こり、膝の痛みなど、どれも筋肉に伸縮両方の性質があれば、大抵は改善が可能です。特に座る機会が多い場合は、筋肉が長時間収縮し、硬くなります。筋肉が縮めば関節の間隔も狭まり、常に骨同士が圧迫し続けることになります。これが5年、10年、20年と続けば骨格もゆがみ、何もしていないのに体が痛いという状態が生まれます。多くの場合、年齢のせいにされますが、正確に言えば、筋肉の伸びる力が劣化したということなのです。
長いこと縮まっていた筋肉を再び伸ばすことは可能です。最初は若干の痛みを伴いますが、1、2週間続けることで少しずつ関節の痛みが減り、階段の上り下りなどの生活動作に余裕が出てきます。今回紹介するエクササイズを週に1、2回行うことで、伸縮両方の力を鍛えることができます。無理せずゆっくり行い、筋肉の伸ばせる範囲を少しずつ広げていきましょう。
今月のトレーニング
STEP 1
ジェファーソン・カール
10回3セット
オプション:ダンベルまたは水の入ったボトル、踏み台
このエクササイズでは、背筋、お尻、太もも裏(ハムストリング)、ふくらはぎの筋肉を伸ばしていきます。写真ではダンベルを持ったまま台に立ち、前屈しているだけに見えますが、いくつかポイントがあります。まず、膝を伸ばしたままにすること。そして、前屈に入る際には背骨をゆっくりと曲げていくのですが、頭を下げ、腹筋を使って背中を丸めるように意識します。体の硬い方は、最低でも手がすねに触れるようになってからダンベルを使い始めてください。踏み台も手がつま先に触れるようになってからでOKです。
STEP 2
オーバー・ランジ
10回3セット
オプション:踏み台、手すり
膝と足首の可動域のエクササイズです。足を前後に開きます。前足のかかとを床につけたまま体全体を前に移動させます。この際の注意点が3つ。1つ目は、後ろ足をできるだけ真っすぐ保ち、膝を床につけないこと。2つ目は前かがみにならずに、上体が常に腰の上にあるように意識します。3つ目は、前足の膝がつま先より前に出ることを目安に。かかとが浮かないようにしてください。体の硬い方、膝に違和感のある方は踏み台や手すりをサポートに使いましょう。
STEP 3
サイド・ベンド
10回3セット
オプション:ダンベルまたは水の入ったボトル
腰の横の可動域を鍛えます。足は腰幅程度に開き、直立姿勢から体を横に倒し、片手が膝の横に来るようにします。この際、逆側に腰が突き出ないように注意しましょう。たとえば、右手で右膝を触る場合、腰が左に突き出ると効果がなくなります。また、体が硬いと逆の足が浮く傾向があるので、しっかり両足を地面につけること。最初は負荷なしで行い、慣れてきたらダンベルや水の入ったボトルを活用しましょう。
※健康上の不安がある場合は、必ず医師に相談のうえ行うようにしてください。
※同記事は、インディアナ州立大学でエクササイズ・サイエンス修士を取得し、フィットネスおよび栄養コーチングの指導を行う島田耕太さんが、資料や経験を元に執筆したものです。
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