健康な歯でスマイルライフ
日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出 修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。
アメリカの歯科保険最新事情
国民皆保険の日本と違い、アメリカの歯科保険は一部の例外を除き、雇用者を通して、あるいは個人で契約する任意保険であることはご承知の通りです。日本のように政府の基金に請求する保険と異なり、保険の適用範囲はひとりひとり違うため、個々に調べるだけでも歯科医院は多大な労力を払わざるを得なくなっています。最近は、ワシントン州でよく利用される保険会社であっても、こちらがあ然とするような支払い例が出てきています。今回はその辺りを書いていきたいと思います。
インプラント上のクラウン作製の例
歯周病専門医から紹介のあった患者さんに、インプラント上のクラウン作製を依頼されました。事前に保険を調べたところ、インプラント上のクラウンだと50%を保険でカバーするとの返答があり、患者さんにも支払いについて説明をしました。治療を開始し、無事クラウンを作製したところで保険会社に請求すると、治療が安価な局部入れ歯相当の金額に減額された分しか払ってもらえませんでした。支払いの明細には、トータルで3歯以上の欠損があるケースでは、局部入れ歯の金額しか保険では支払われないとの注意書きが添付されてきました。このようなルールは事前に通知されたわけでもなく、今回の支払いの明細で初めて知ったことでした。ちょうど友人の歯科医も同じようなことが起こって憤慨していました。保険会社は突然のルール変更や支払額の減額を事前の通達なく突然行うことがあり、われわれ歯科医を困惑させるのです。支払われない分は患者さんの負担増となりますので、いちばんの被害者は患者さんということになるのかもしれません。
アメリカの保険会社は、非営利団体ではなく営利団体なので、会社の儲けには非常にシビア。経営者のトップの給与さえ会社の利潤の大小に大きく左右されるのでしょう。加入者の利益よりも自分たちの利益が最優先という現実を踏まえ、くれぐれも保険会社を選ぶ際は注意してください。
保険加入後に待機期間がある場合も
個人加入の歯科保険に多いのですが、治療したいことがあって急いで歯科保険に加入しても、受けたい治療に1年間の待機期間(Waiting Period)が設定されていることがあり、すぐに保険でカバーできないケースが少なくありません。待機期間とその対象になる治療について、歯科保険加入時にどうなっているのか事前に知っておく必要があります。保険会社から十分に説明されないことも考えられるので、自分の希望や状況に合致している保険なのかよく調べてから加入するようにしましょう。
まとめ
歯科保険でカバーされると思っていても、治療内容によっては保険会社の判断によってカバーされないこともあります。かかりつけの歯科医院とも相談して、最適な保険に加入するようにしましょう。ケースによっては、保険に加入しないことも含めて十分な検討が必要かと思われます。