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歯周病はメンタルの健康にも悪影響?〜健康な歯でスマイルライフ

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

歯周病はメンタルの健康にも悪影響?

昨年、かかりつけの獣医さんから、わが家の老犬の心音に雑音(Heart murmur)があると指摘されました。その際、獣医さんは犬の歯周病が心臓疾患リスクを高める可能性についても言及。人間のみならず、ペットにおける歯周病の全身疾患へのリスクまで認識されていることに、正直驚きました。

これまで本コラムでも取り上げてきた歯周病と全身疾患の関連性ですが、英国のバーミンガム大学でかつてない規模の疫学調査が最近行われ、リスクがより明らかになってきました(BMJ open 2021:11:e048296.)。今回は、この研究を中心に書いていきたいと思います。

バーミンガム大学の研究内容

英国の一般医の記録で歯周病(歯肉炎あるいは歯周炎)の記載のあった6万4,379人について、追跡調査を行いました。内訳は、歯肉炎が6万995人、歯周炎が3,384人、平均年齢は44歳、男性43%、喫煙者30%です。これらの患者について、歯周病の記載のない25万1,161人の患者(年齢、性別、人種、喫煙、肥満度などをマッチさせたグループ)と、全身疾患との関係において比較しました。

その結果ですが、歯周病のグループでは、以下の疾患リスクが上昇していることがわかりました。

(1)心血管障害(心不全、脳梗塞など)18%

(2)心代謝障害(高血圧、2型糖尿病など)7%(2型糖尿病では26%

(3) 自己免疫疾患(関節炎、1型糖尿病、乾癬(かんせん)など)33%

(4)精神疾患(うつ病、不安症状など)37%

結論および考察

今回の疫学調査により、歯周病は多くの慢性疾患および精神疾患のリスクを高める可能性があることが明らかになりました。ここまで大規模な疫学調査はこれまでになく、また歯周病と精神疾患への影響を調べた研究もほとんど見られないので、貴重な研究と言えます。

一方で、歯周病の評価に歯周ポケットのデータを用いているわけではなく、ただ単に一般医の問診によるものなので、歯周病と疾患の関係について論じるには限界があるのも事実です。しかしながら、英国ではリウマチ性関節炎患者が40万人いて、そのうち歯周病患者はそうでないグループと比較して4倍にも上ります。リウマチ性関節炎の症状に関しても、歯周病患者では、その症状が重い傾向にあるようです。

まとめ

今まで数々の研究が歯周病と全身疾患の関連性を示唆しています。バーミンガム大学の研究結果からも、口腔内の健康が全身の健康維持に直結することは明白です。毎日の口腔ケアおよび定期的な歯科検診と歯のクリーニングを欠かさず続け、全身の健康につなげていきたいものですね。

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748