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歯周病とアルツハイマー型認知症〜健康な歯でスマイルライフ第196回

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

歯周病とアルツハイマー型認知症

歯周病とアルツハイマー型認知症の関係については、本コラムでもたびたび取り上げてきましたが、それを裏付ける最新研究がフォーサイス研究所から発表されました。今回はこれまでの研究を含め、知見をまとめてみたいと思います。

アルツハイマー型認知症とは

認知症で最も多いタイプがアルツハイマー型です。アミロイドβ(ベータ)と呼ばれる異常なタンパク質の蓄積と神経原線維変化(過剰にリン酸化されたタウというタンパク質がたまっていく)、そしてミクログリア細胞(脳内の清掃細胞)の活性化による脳内炎症を特徴とします。

歯周病の影響は?

歯周病は、口腔内の歯周病菌群によって引き起こされる歯の周囲組織、歯肉、歯根膜、歯槽骨の炎症および破壊を引き起こす炎症性疾患。歯周病菌が直接的あるいは間接的に全身に影響し、多くの全身疾患のリスクを高めるとされています。たとえば、アルツハイマー型認知症のほかにも、高血圧、糖尿病、大腸がん、脳梗塞、心筋梗塞、未熟児出産などに歯周病が関係していることが知られます。

アルツハイマー型認知症に関しては、次のような研究があります。
(1)統 計 的 研 究(PLoS ONE April 30, 2021 https://doi.org/10.1371/journal.pone.0251056):データベースを用いて、日本で60歳以上の約400万人の歯周病患者を調査した結果、残存歯が少ないほど、アルツハイマー型認知症の発症率が高い傾向があることが明らかになりました。
(2) 実 験 的 研 究(PLoS ONE 2018;m 13(10):e0204941):マウスに歯周病の有力な原因細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)を22週間、口腔内に毎日塗り、脳の海馬に及ぼす影響を調べたところ、その菌が海馬から検出。また、海馬の組織にアルツハイマー型認知症で特徴的な神経炎、神経変性、細胞外のアミロイド沈着などの所見が認められました。なお、何も細菌を塗らないグループのマウスには、このような海馬の病変はなかったとのことです。

フォーサイス研究所などによる新たな発見

フ ォ ー サ イ ス 研 究 所 な ど の 研 究(J Neuroinflammation 2023,20:142)では、アルツハイマー型認知症の特徴のひとつ、脳内のミクログリア細胞の活性化についてマウス実験を試みました。マウスの臼歯間に糸を入れて歯周病環境を作り、ミクログリア細胞に及ぼす影響を、1、10、20、30日と経時的に調べると、日数の経過と共にミクログリア細胞がより活性化していました。

また、ミクログリア細胞と口腔内の細菌を共存させた状態で培養した細胞実験においても、ミクログリア細胞が活性化することがわかりました。つまり、この研究は、歯周病がアルツハイマー型認知症と関係する可能性をより強力に示唆したことになります。

まとめ

統計的にも実験的にも歯周病とアルツハイマー型認知症との関係を示す研究が増えてきました。口腔内洗浄をおろそかにせず、歯周病を予防して全身の健康につなげたいものですね。

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748