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歯周病は、不整脈のリスクファクター?〜健康な歯でスマイルライフ第190回

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

歯周病は、不整脈のリスクファクター?

歯周病が全身疾患に及ぼす影響については、これまでも本コラムで話題にしてきました。歯周病に関係するかもしれないとされている疾患は、脳梗塞、誤嚥性肺炎、心筋梗塞、心内膜炎、動脈硬化、糖尿病、未熟児・低体重出産と多岐にわたり、年々研究が進んでいます。最近は獣医学においても同様に、歯周病予防がペットの健康維持につながるとの認識が広がっているようです。今回は、広島大学の研究チームが発表した、歯周病と心臓疾患に関する新しい論文を取り上げます。

心房組織の線維化による不整脈、心房細動とは

不整脈の中でも頻度が高いのは、心房細動と呼ばれる心臓疾患です。その発症には、心房組織の線維化が関与するとされています。心房細動が慢性化すると、血栓や脳梗塞、心不全につながることも。そうならないためにも、心房組織の線維化を抑制し、心房細動を予防することが重要です。

歯周病は最もありふれた感染性の炎症疾患であり、さまざまな全身疾患を悪化させることで知られます。しかし、心房の線維化、心房細動との関連については明らかにされていませんでした。そこで広島大学の研究チームは、手術で摘出された左心房の病的突起物を調べることで、その解明を試みました(J Am Coll Cardiol EP. 2023 Jan,9 (1)43-53)。

歯周病と心房細動との関連性

調査の対象は、左心房の病的突起物の除去手術を予定していた心房細動患者の76 名です。まず、全患者に対して口腔内検査を行い、それぞれの残存歯数、歯周ポケット検査時の出血の有無、歯周ポケットの深さ、歯周病の炎症の表面積を調べ、評価の指標としました。

そして、年齢、糖尿病など、さまざまなファクターを調整のうえ調査した結果、歯周ポケット検査時の出血の有無、歯周ポケットの深さ、歯周病の炎症の表面積はいずれも、左心房の線維化と統計学的有意差をもって正の相関関係を示すことがわかりました。また、10 以上の残存歯を有する患者における歯周病の炎症の表面積は、左心房の線維化と強く正の相関関係が認められました。

つまり、こうした研究成果を踏まえると、歯周病は心房細動のリスクファクターである可能性が高いと言えます。論文の著者らは今後、歯周病治療が心房細動の発症を減少させ、心臓病患者の健康を向上させることができるかどうか、臨床治験を行っていくとのことでした。

まとめ

歯周病菌が心臓に到達することで、不整脈などの心臓疾患を招く可能性がありそうです。口腔内を健康に保つことは、心臓のみならず、全身の機能維持に大切。毎日の口腔ケアと定期的な歯のクリーニングを欠かさず、いつまでも元気に暮らしたいものですね。

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748