「ここ最近、いつも口の中、あるいは唾液が苦く感じるんですが、どうしてなんでしょう?」という患者さんに遭遇しました。今回は口の中が苦く感じる問題を中心に書いて行きたいと思います。
口の中が苦いと感じる原因は分からないことが少なくありませんが、理論上は以下の二つが挙げられると思います。舌には、味覚を感じる味蕾という細胞が存在しますが、その細胞のセンサーの異常に起因する場合と実際に苦み成分が口に増えていると考えられる場合です。
口の中が苦い、唾液が苦い原因
A.味覚のセンサーの異常(味覚異常)
多くの場合が、これに相当すると考えられています。実際には、唾液の成分には変化はないが、いろんな状況によって、味覚の苦みを感じる細胞のセンサーに変調をきたし、苦みを普通の状況でも感じる場合です。
(1)亜鉛不足:亜鉛不足が味覚異常を引き起こすのはよく知られており、亜鉛が不足すると味蕾細胞の新陳代謝を阻害し、味覚異常を引き起こすと言われる。
(2)喫煙:喫煙で味蕾細胞がダメージを受けて味覚異常を引き起こす場合。
(3)薬:ある種の薬によって、味蕾細胞に不調を来たし、味覚異常を引き起こす場合。薬の 種類を換えることにより、改善されることがある。
(4)ストレス、体調不良:口腔乾燥が起きやすくなり、口腔内に細菌が増えやすく、味蕾細胞にも不調を来たしやすい。
(5)更年期、妊娠:ホルモンの変化により、味蕾細胞に変調を来す場合。
(6)ドライマウス:口腔乾燥によって、細菌も増えやすく、味蕾細胞にも変調を来たしやすくなる。
(7)舌炎:舌の炎症によって味蕾細胞に変調を来す場合。
B.実際に口の中に苦み成分が増えていると考えられるケース
(1)胆汁の逆流:十二指腸に分泌される苦みの強い胆汁が胃に逆流し、さらに食道を通して口腔内に逆流して苦みを感じる。加齢で食道の筋肉が弱くなったり、胃酸過多を伴うと起こりやすい。
(2)舌苔:舌苔は舌の表面の角質が伸びた状態を指す。舌苔があると、その隙間に細菌や食べカスなどが溜まり、ガスを産生、ガスが唾液に溶け込み、苦みを感じると言われる。
(3)口腔清掃不良:口腔清掃が悪いため口腔内が酸性に傾いて苦み成分を産生する特殊な細菌が多くなり、苦みを感じやすくなる。唾液の分泌が落ちるとなおさら、細菌が増殖しやすくなる。
(4)薬、サプリメント:ある種の薬やサプリメントの苦み成分が唾液中に出て苦みを感じる場合。
口の中が苦く感じる時どうしたらいいか?
原因が分かれば、それをなくす対策を取れば症状は改善されるはずです。しかし、原因がはっきりしないことも少なくありません。その他、口の中が金属の味がする、酸っぱく感じる等の問題が起こる方もいます。味覚異常の症状がなかなか改善しない場合は、耳鼻科、Oral Medicine、内科などの専門家に診てもらいましょう。
[健康な歯でスマイルライフ]