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常識とは

Aさんは日本の企業から派遣されて、現在アメリカで仕事をされています。最初のうちは慣れることに精一杯でしたが、少し周りのことを見る余裕ができてからは、別の意味でストレスを感じることが多くなったと仰います。
例としては、職場の物品管理や整頓について「物を使ったら、元の場所に戻すべき!」「それをやるんだったら、最初にそこを片付けてからでしょ?」といった些細なことです。またアメリカ人の場合、時間や約束事の感覚が、言っていることと行動が違いすぎると言います。例えば「あと2、3分で」と言ったにも関わらず、実際は30分かかることも珍しくない。
「後で連絡する」と言ったくせに、いくら待てども連絡がないことがほとんど、といった具合です。一番気になってストレスを感じるのは、基本的な仕事の進め方についてだそうです。例えば、仕事の締め切りと流れを考えれば、自分が担当する事を予定通りにこなさなければプロジェクト全体に影響がでるのは明らかなのに、平気で定時で帰宅する。遅れていることを指摘しても、謝るわけでもなく「自分は忙しいんだ」と主張する。「自分のせいで、周りに迷惑をかけているという認識がないことが信じられない!」と仰います。
確かに、日本の感覚でいえば整理整頓、時間厳守、約束事は守る、人に迷惑をかけてはならない、といったことは子どもの頃から教えられることです。だからこそ、それらのルールを守るのは常識だ、と思いがちです。しかし、こうした考えは、アメリカでは常識ではないのかもしれません。
Aさんに、常識の意味を伺ったところ、「当たり前のこと、普通の感覚、皆が知っていること、人々の共通の感覚」といった答えがありました。そこで、「皆・人々ってだれ?」「普通・当たり前ってどういうこと?」と訊ねてみまし
た。するとAさんは、はっと気付かれた様子で、「常識とはマジョリティーのルールであって、ここアメリカでは日本人はマイノリティーだから、日本人の常識は通用しないんですね。残念ですけど納得です!」と仰いました。
アメリカは移民の国で、一般的に単一民族国家といわれる日本に比べると、普通が何かと単純に言い切れないことが多くあるといえるのです。だから、英単語の「CommonSense」とは、「各コミュニティーにおける共通の感覚」の意味であり、常識という日本語が意味する「常に物事の道理を知っていること」とは全く違ったスケールの意味だと気付かされます。
この違いを理解したAさんは、アメリカ人や他の国出身の同僚に対し、ある意味諦めがついて余計な期待をすることがなくなった分、いらいらすることも減ったと仰います。「郷に入れば郷に従えということわざは、こんな所からきているのかもしれませんね」と仰ったAさんは、ちょっとスッキリしたように見えました。

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