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アイデンティティ・クライシス

Aさんはアメリカ人のご主人との結婚を機に渡米してこられました。英語はご主人との会話に困ることはありませんが、こちらで仕事を探したりするのはちょっと勇気が必要だと仰います。渡米後すぐに妊娠し、子供が生まれたこともありアメリカ社会とのつながりが薄いまま今まできてしまった、との事でした。子供がプリスクールに行くようになり、夫や義理の家族以外のアメリカ人とお付き合いするようになってから、ストレスを感じるようになったそうです。Aさん曰く、自分の英語がわかってもらえなかったらどうしよう? という不安感から会話をするような状況を避けていたら、ママ友や子供 の学校の先生などから、おとなしい人、シャイな人、と思われているようだ、と仰います。日本で仕事をしていた時はどちらかと言うと気が強くグループのリーダー的な存在だったというAさんは、自分のセルフイメージのギャップに落ち着かない気分だと仰います。
心理学の分野において、「人の行動はその人の性格によって決まるのか。あるいはその人が置かれた状況によって行動・性格が変わってくるのか」が討議されていて、現在はどちらの影響も考えられると言われています。そのため、アメリカ生活でAさんの性格・行動パターンが変わってしまったとしても不思議なことではありませんし、どちらもAさんの性格だといえます。
しかし学問的に考えて問題ないと解ったところで、Aさんの気持ちはスッキリしませんでした。問題はAさんの「自分は誰か?」というアイ デンティティの不確かさからくる居心地の悪さによるものだから当然です。Aさんは、いわゆるアイデンティティ・クライシスと呼ばれる状況に陥っていたといえます。
自らのアイデンティティを確立するためには、本人の価値観や、社会に対する関わり方など心理的な構築が必要になります。その手始めとしてAさんには、「本来の自分はこうあるべき」というイメージと「こんな自分でいたい」という希望について考えて頂きました。Aさん曰く、日本にいた頃の自分が本来の自分だと思うし、そういう自分でいたいとの事。しかし、アメリカという不案内な環境にいることで、なりたい自分になるだけのスキルや自信がないし、そんな自分が嫌だとの事。それならアメリカでの新しい自分(それなりに「なれる自分」)を見つけるべきなのか? それともなりたい自分に向かって頑張るべきなのか? 前者は現実的な妥協案かもしれませんが、100%幸せ とは言い切れないかもしれません。また後者のほうはいつ成し遂げられるのかわからないし、挫折してしまう作業かもしれません。
そんな話をした後、「今は子供もいるし日本にいた時の自分とは違うんだから、これからなりたい自分を探して頑張っていきたい」と仰ったAさんは、少し吹っ切れて頼もしい感じがしました。

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